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丸山眞男「ある自由主義者への手紙」(1950) p.149 から (適宜改行してある。) 以下の部分は、本当の自由討議と説得とは何かを教えてくれる。 直接的には政治における自由討議と説得について述べているのだろうが、広く一般的にあてはまることのように思う。 ーーーーー 例えば、(自由)民主主義の基本原理の一つとしての自由討議(フリーディスカッション)による決定という事をとってみよう。或いはこれを説得し説得される関係といいかえてもいい。ひとはこれを暴力或いは権力的強制による決定と対比させる。いうまでもなく前者は民主的方法であり、後者は非民主的方法である。事は明々白々に見える。しかしひとたびこうした一応の抽象的規準を具体的な社会関係に適用するとなると、忽ち容易ならぬ困難が発生し、両者の弁別には極めて多角的な考察が必要になってくる。 イギリスの著名な政治学者であるE・バーカーは説得の原理を次のような三カ条に要約した・・・。 (一)説得は多種多様でなければならぬ。換言すれば独占的な説得は説得でなくして強制である。 (二)それは理性的でなければならぬ。 (三)それは拒否しうるものでなければならぬ。したがって権力を後盾とした説得は説得ではない。また相手に恐怖心を起こさせるような威嚇とか、或いは賄賂その他の直接的利権であるような説得はやはりその本質を失ったものである。 ーーこれだけを見ても、説得による決定ということがしばしば簡単に考えられているよりもはるかに容易ならぬ前提条件をともなうものであることが知られよう。・・・ 形だけは民主的な討議のように見えて、その構成員の具体的な人間関係と行動様式を見るならば、およそ自由な相互説得たることから遠いような「会議」が日本中のあらゆる種類の団体において日々何百回となく開かれて、そこでの決定が「民主的」な決定として通用しているのが現実ではないか。とくに構成員の間に身分上・地位の上下関係がある場合、上級者に絶大な自己抑制力と洞察眼がない限り、さまざまの論理外的強制の作用によって自由討議は忽ち戯画化する。 ーーーーー アーネスト・バーカー(Ernest Barker)について調べてみた。 Wikipedia 英語版 桾沢 栄一 イギリスにおける政治的多元主義の諸相 : E. バーカー、G.D.H. コール、H.J. ラスキの政治思想を中心に(埼玉女子短期大学研究紀要) 政治学原理 (1969年) アーネスト・バーカー (著), (翻訳)堀 豊彦、 藤原 保信、小笠原 弘親 勁草書房 (1969) 近代自然法をめぐる二つの概念 ―社会・政治理論におけるイギリス型とドイツ型 アーネスト バーカー (著), (翻訳)田中 浩、新井 明、津田 晨吾 御茶の水書房〔新装版〕(1992) 本に溺れたい バーカー『近代自然法をめぐる二つの概念』 |
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