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「現実」主義の陥穽 p.172-175 から 以下の記述は、いわゆる現実主義の問題を指摘している。そして、「現実的でない」という批判を吟味すべきことを教えてくれる。 特に国際政治や外交の場面では、アメリカ(合衆国)の政策に合致することだけが「現実的」と言われる傾向が顕著であろう。 ーーーーー 私はどうしてもこの際、私達日本人が通常に現実とか非現実とかいう場合の「現実」とはどういう構造をもっているかということをよくつきとめておく必要があると思うのです。私の考えではそこにはほぼ三つの特徴が指摘出来るのではないかと思います。 第一には、現実の所与性ということです。 現実とは本来一面において与えられたものであると同時に他面で日々造られていく行くものなのですが、普通「現実」というときはもっぱら前の契機だけが全面に出て現実のプラスティックな面は無視されます。いいかえれば現実とはこの国では端的に既成事実と等値されます。現実的たれということは、既成事実に屈服せよということにほかなりません。現実が所与性と過去性においてだけ捉えられるとき、それは容易に諦観に転化します。・・・ さて、日本人の「現実」観を構成する第二の特徴は現実の一次元性とでもいいましょうか。いうまでもなく社会的現実はきわめて錯綜し矛盾したさまざまの動向によって立体的に構成されていますが、そうした現実の多元的構造はいわゆる「現実を直視せよ」とか「現実的基盤に立て」とかいって叱咤する場合はたいてい簡単に無視されて、現実の一つの側面だけが強調されるのです。・・・ ・・・我が国民の「現実」観を構成する第三の契機に行き当らざるをえません。すなわち、その時々の支配権力が選択する方向がすぐれて「現実的」と考えられ、これに対する反対派の選択する方向は容易に「観念的」「非現実的」とおいうレッテルを貼られがちだということです。・・・ ーーーーー |
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