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●この胸に深々と突き刺さる矢を抜け

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上・下
白石一文(著)

 

友人から勧められて、読んだ。確かに面白かった。
政治的・経済的・時事的イッシューなどについての主人公の考え方ないし思想が述べられている箇所が多い。もちろん全部に共鳴できるわけではないが、このようなスタイルの小説は多くないように思う。
悲の器(高橋和巳(著))が、このようなスタイルだっただろうか。

以下の記述がある。
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 そんな僕たちが、所得の低い人々に同情したり共感したりすることは偽善ではないのか。僕たちの同情や共感には一体どれほどの根拠や理由があるのだろうか。「額に汗して働く人たちが報われない社会、この国をそんな酷薄な社会にして本当によいのでしょうか? 私たちはいまこそ冷静になってそのことを考えてみるべきではないでしょうか」なーんて真剣な表情で語っているニュースキャスターの年収は五億円なのである。年収四百万円の平均所帯にすれば彼は自分たちの所得の百二十五年分をたった一年で稼ぎ出していることになる。
(上 50〜51頁)
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この後、松坂選手の年俸が同じ年に生まれた人の平均所得の三百三十九倍であること、マザー・テレサの話などが続く。

経済格差の問題に限らず、この主人公は偽善を自覚しながら、その偽善を少しでも改善しようとはしていないような気がする。主人公が少々頑張ったからといって大勢にに影響しないことだと言えばそのとおりではあるが。

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