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著作権法20条の解説( 3/12)

(1999.4作成)

「意に反して」、名誉・声望の侵害との関係
 本条1項は、意に反する改変を受けない旨を定めており、同一性保持権の侵害に著作者の名誉・声望(主観的な感情等ではなく、社会における客観的な評価)を害すること(又はそのおそれがあること)は要件として記載されていない。
 そして、113条3項が「 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。」と規定していることなどからして、立法者としては意識的に、名誉・声望を害することを要件としない趣旨で規定したものであると言えるから、名誉・声望を害しない場合でも同一性保持権の侵害になりうると解釈せざるをえないだろう。
 著作者の「意」は、著作者の主観的な意思と解されるが、その意思は全く恣意的・独善的なものでもよいのだろうか。
 立法担当者の説明では、「著作者にある程度委ねるという考え方」があり、「著作者の主観的な要素が入り込む余地がある」とされている(加戸132頁)が、「ある程度」とか「入り込む余地がある」という表現に見られるように、必ずしも著作者の主観的意思に100%従う趣旨でもなさそうである。
本条における「意」とは、問題になっている著作物を創作した者の意思として法的保護に値するものを指し、恣意的・独善的な意思は含まれないと考えることができよう(なお、斉藤博「著作者人格権の理論的課題」民商116巻6号3頁(836頁)も「著作者の「同意」なり「意に反する」という語をもっぱら著作者の主観的事情、さらには著作者の感情に関わらしめることは妥当ではない。」とし、田村・概説358頁は「通常の人間であれば、特に名誉感情を害されることがないと認められる程度の改変は、同一性保持権の問題を生じない」とする。また、半田・概説(第8版)127頁は、「この権利は、著作者の精神的・人格的利益の保護のために法的承認を受けた権利であるから、厳密にいえば著作物の改変にあたる場合であっても、それが著作者の精神的・人格的利益を害しない程度のものであるときは、同一性保持権の侵害とはならないと解すべきである。」とする)。
 なお、改正についての提案の項を参照。
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