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著作権法20条の解説( 6/12)

(1999.4作成)

2項の解釈態度
 立法担当者によれば、本条2項は「真にやむをえないと認められる改変を必要最小限度において許容しようとするもの」で、各号の規定は「きわめて厳格に解釈運用されるべき」であり、「拡大解釈されることのないよう注意を要する」とされている(加戸134頁)。
 しかし、第1に、1項については「きわめて厳格に解釈運用されるべき」ではないとしつつ、2項だけを「きわめて厳格に解釈運用されるべき」とする解釈態度には疑問がある。
 第2に、権利を定める規定の違反について刑罰を定めている場合(著作者人格権の侵害にも119条により刑罰が定められている。)には、罪刑法定主義の要請からして、権利を定める規定(犯罪の構成要件を定める規定)も拡大解釈をされてはならないのであり、権利を制限する規定(2項)についてだけ拡大解釈を戒めるのは疑問である。
 第3に、2項では、1号ないし3号で比較的具体的な規定をおいた上で、4号で、「前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」という一般的・抽象的・補充的規定をおいているのであり、「きわめて厳格に解釈運用されるべき」とすると、4号を規定した趣旨が没却されかねない。
 著作権法は「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」を目的としており(1条)、20条についても、1項で著作者の権利を定め、2項で「文化的所産の公正な利用」に配慮して著作者の権利が及ばない範囲を定め、合わせて「文化の発展に寄与すること」が企図されていると考えるべきであろう。
 したがって、2項についてだけ「きわめて厳格に解釈運用されるべき」とする解釈態度は正当とは思えない。

廃棄等
 例えば、著作物の原作品を廃棄・焼却等した場合には、改変に該当せず、同一性保持権の侵害にはならない。
 廃棄・焼却等は改変よりも著作者の人格を損なうとも言えるが、本条が予定しているのは、改変された形で世の中に出されることであり、本条は著作物の原作品が世の中から消えることについて規制しているわけではない(加戸134頁、前記シンポジウムにおける松田政行発言53頁以下、同じく半田正夫発言54頁以下、小泉104頁)。
 なお、例えば、原作品の所有者が公衆に対するパフォーマンスとして破壊等をした場合には、113条3項により、著作者の社会的名誉を害する方法による利用として、著作者人格権の侵害となりうることを指摘するもの(小泉104頁)がある。
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