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著作権法20条の解説( 8/12)

(1999.4作成)

学校教育上の改変(2項1号)
 2項1号は、教科用図書等への掲載(33条1項、4項)、学校向けの放送番組での放送等やその番組用の教材への掲載(34条1項)にあたって、「用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむをえないと認められるもの」である。
 「用字又は用語の変更」については、例えば、学習指導要領(文部省告示)では、小学校では学年別漢字配当表(合計996字)が定められており、また中学校等においても常用漢字(1945字)の学習が目的とされているため、文学作品等を学校教育上の教材として活用するときに原文の用字・用語等を変更せざるをえない場合があり、また、現代仮名遣いに変更せざるを得ない場合があることから規定されている。
 そのほか、英語の教科書の場合に、学年によって、むずかしい単語をやさしい単語に置き換えをせざるをえない場合も指摘されている(加戸135頁)。
 「その他の改変」については、道徳教育や生活指導の観点から好ましくない部分を削除・変更せざるを得ない場合が指摘されている(加戸135頁)。
 「学校教育の目的上やむをえないと認められるもの」に関しては、似たような別の作品を使って教育目的達成が可能な場合はやむをえない改変には該当しないと言われている(加戸135頁)。
 しかし、国語で読解力等を養うための教材などの場合に、特定の作品を使用しなければ教育目的を達成できないということはあまりないと思われる。そのような場合に、改変せざるを得ない部分が全く存在しないものしか教材に利用できないとすると、学校教育において豊かな文学作品に触れる機会が非常に制約されることになろう。その意味では、教材として代替性がないことを本号の要件と考えるべきではなく、教材として使用する教育的価値があり、しかし、学校教育の目的からその教材の本質的ではない部分を変更せざるを得ない場合は本号に該当すると言うべきであろう。
 なお、美術作品については、学校教育の目的であるからといって本号に該当する余地はまずないだろうと読める指摘があり(加戸135頁)、その根拠は、教材として代替性があることのようである。
 しかし、例えば、美術史上重要な著作物については教材としての代替性がないと考えられる場合もあろう。したがって、美術の著作物について本号が該当する可能性があまりないのは、美術の著作物を改変すると著作物の教材としての価値を保てないことが多く、改変したのではかえって学校教育の目的を達成できない場合が多いという事情などによると思われる。

建築物の改変(2項2号)
 2項2号「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」については、建築物は、芸術というよりも、主として人間の居住や使用という実用的・経済的見地から作られたものであるから、その実用的・経済的見地から効用の増大を図る結果としての改変を許すことにしたものと説明され、美的な価値の観点から居住者の好みで直す行為については本号に該当しないかのような説明がされている(加戸135頁)。
 しかし、本号は「模様替え」を含んでおり、「模様替え」は主として美的な価値の観点から行うものであろう。
 いずれにせよ、本号の「増築、改築、修繕又は模様替え」について、「実用的・経済的見地から効用の増大を図るための」という限定があるものとして解釈することは無理と思われる。
 なお、建築物を全部壊してしまうことは同一性保持権の侵害とはならない(加戸136頁)。
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