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著作権法20条の解説( 9/12)

(1999.4作成)

プログラムの改変(2項3号)
 2項3号は、1985(昭和60)年改正でプログラムの著作物に関する規定が整備されたときに合わせて規定されたものである。
 プログラムについては、バグと呼ばれる不具合の発生、機能の改善・向上のためのバージョンアップなど修正が必要なことが多いのが通常であること、実用的な性質を有することなどの特殊性に基づいて、本号により改変が許されることとされた。
 「特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため」に必要な改変とは、バグを修正して電子計算機で利用できるようにすること、特定の機種のコンピュータ用のプログラムを他の機種のコンピュータで利用できるように修正することなどが含まれ、「プログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするため」に必要な改変には、処理速度を向上させるための修正、機能の追加・拡大などが含まれるとされる(加戸136頁)。
 この後段の規定により、プログラムの著作物に関しては同一性保持権が働くことはほとんどなくなったとされ(中山信弘『ソフトウェアの法的保護』新版70頁以下、田村・概説363頁)、「わずかに、著作者の信用を毀損するために、バグを入れたり、処理効率を落とす目的で行われる改変などが想定されるぐらいであろうか」(田村・概説363頁)とされる。
 なお、以上は著作者人格権との関係であり、これらの改変をプログラムについて著作財産権を有しない者(その者から許諾を受けていない者)が行う場合には、複製権や翻案権などの侵害になりうる。ただし、プログラムの著作物の複製物の所有者の一定の行為は47条の2により合法である。

ゲームソフトの効用を増加させるツール
 プログラムに関しては、ゲームソフトの効用を増加させるツールが同一性保持権を侵害するかどうかが争われるケースがある。
 例えば、三国志V事件では、コンピュータ用シュミレーションゲームのプログラムに添付されているユーザー用データの登録用ファイルにソフトハウスの予定しないデータを書き込むことを可能にするプログラムの頒布が問題とされたが、第一審の東京地判平成 7年 7月14日(判時1538号203頁、判タ886号284頁)も控訴審の東京高判平成11年 3月18日(判例集等未登載、<http://www.ne.jp/asahi/law/y.fujita/copy_r/hanketu990318.html>参照)も同一性保持権の侵害を否定した。
また、ネオ・ジオ事件では、他人のテレビゲーム機の本体にのみ接続可能な専用コントローラーを、いわゆる連射機能を付加して製造、販売する行為につき、ゲームソフトウエア並びにその上映による影像及びその動的変化が問題にされたが、
大阪地判平成9年7月17日(判タ973号203頁)は、同一性保持権の侵害を否定した。
 さらに、「ときめきメモリアル」事件では、ゲームソフトのプログラムの実行にあたってゲーム機のハードウエアに読み込ませて使用するデータを収めたメモリーカードを輸入し、販売した行為が問題とされたが、大阪地判平成9年11月27日(判タ965号253頁)は、同一性保持権の侵害を否定した。
 このような判例からすると、著作権者のプログラムを改変することなくゲームソフトの効用を増進させるツールの販売等をする行為は同一性保持権を侵害しないとする方向にあると言えよう。
 なお、ゲームソフトについては複製権等との関係で「映画の著作物」とした裁判例が従来から存在してきたが、前掲の三国志V事件控訴審判決が、高裁レベルの判断として、シミュレーションソフトである「三国志V」が「映画の著作物」に該当しないとしたことが注目される。
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