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著作権法20条の解説(11/12)

(1999.4作成)

私的利用と公開
 「著作物の変更それ自体は個人的利用の範疇に属し、だれにでも自由に許されるのであるから、著作者の同意を要しないこともちろんである。だが、変更された著作物が複製等によって公に利用されるようになると、それは個人的利用の範囲を逸脱することになり、したがって著作者の同意を必要とする。」とされている(半田・概説147頁)。
 また、立法担当者も、本条が予定しているのは、改変された形で世の中に出されることであるとしている(加戸134頁)。
 人格権といえども社会的接触がある場面において侵害になりうるのであり、社会的接触がない私的領域で改変が行われたにすぎない場合は、同一性保持権の侵害にはならないと解される(藤田康幸「著作者人格権の限界について」<http://www.ne.jp/asahi/law/y.fujita/copy_r/iden.html>)。
 したがって、家庭内で著作物を改変しても、改変された著作物が家庭内にとどまり社会に公表されるなどのことがない限り、著作者人格権としての同一性保持権の侵害にはならないものと解すべきである。
 なお、田村・概説366頁は、「現行法は、30条の私的使用の範囲内で改変が行われたとしても同一性保持権侵害を問いうる構成になっており(50条参照)、やや著作者に偏した解決という嫌いがある。」とし、「立法論としては、・・・同一性保持権侵害を問いうる場面を著作物が公衆に提示、提供される場合に限定すべきであろう。」としている。しかし、第1に、人格権の侵害はもともと社会的接触がある場面においてこそ発生する性質のものであろう。第2に、全くの私的領域内での著作物の改変につき、その情報が察知された場合に国家権力の行使(刑罰権の発動を含む。)があるとすれば私生活の平穏を保つことができなくなるであろう。

不行使特約など
 同一性保持権は著作者人格権の一種として一身専属性があり、譲渡できず、相続の対象にもならないが、さらに、不行使特約をすることもできないとする見解がある。
 しかし、対価の内容や力関係等からして著作者に著しく酷な内容の特約は公序良俗違反として無効になりうることを別として、原則的には有効として差し支えないと思われる(田村・概説341頁など)。そのように解しないと、著作物の円滑な利用が阻害され、著作者としても適切な対価を得て自己の著作物を利用させることができなくなるであろう。
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