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著作権法20条の解説(12/12)

(1999.4作成)

改正についての提案
 いわゆるマルチメディアに関わって、同一性保持権に関する20条の改正が提案されている。
 例えば、(財)知的財産研究所「EXPOSURE '94ーマルチメディアを巡る新たな知的財産ルールの提唱」(1994年2月)(NBL541号52頁など)は、「デジタル技術の進歩により、著作物が改変加工される機会は、飛躍的に増大することが予想される。しかし、改変加工という行為一般に対して同一性保持権が行使されるとすれば、自由な改変加工を可能にするデジタル技術のメリットが活かされず、インターラクティヴな利用をその特徴とするマルチメディアソフトウェアの利用は不可能になる。」などとして、
@ 同一性保持権の不行使特約の有効性の明確化
又は
A 同一性保持権の及ぶ範囲の限定(同一性保持権の及ぶ範囲を著作者の名誉又は声望を害する改変に限定すること)
が提案されている。
 また、「著作権審議会マルチメディア小委員会・ワーキンググループ検討経過報告ーマルチメディアに係る制度上の問題について」(1995年2月)は、「著作物の改変を含むインタラクティブな利用ができるというマルチメディアの特性及び現行著作権法とベルヌ条約の規定振りの相違を考慮して、著作者人格権(同一性保持権)の在り方を見直す必要があるとの意見がある。」とし、「<考えられる対応例>」として、
〔A〕同一性保持権の及ぶ範囲を「(著作者)の意に反する改変」から「著作者の名誉又は声望を害するおそれのある改変」に改める(20条1項)。
〔B〕20条2項4号を「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らし公正な慣行に合致すると認められる改変で、著作者の名誉又は声望を害するおそれのないもの」に改める。
〔C〕20条に「著作者は、その著作物の改変について、他人に対し、当該著作者の名誉又は声望を害することのない限り第1項の権利を行使しないことをあらかじめ承諾することができる。この承諾は書面によってなされなければならない。著作者がこの承諾を行った場合には、その際に反対の意思表示をしていない限り、第3者に対しても第1項の権利を主張することができない。」という趣旨の規定を追加する。
を挙げている。
 しかし、「<考察>」としては、「〔A〕−〔C〕のような規定の見直しを支持する意見があるものの、次の理由から現時点における法改正には消極的又は慎重な意見が多かった。」とし、「@法改正により著作物のみだりな改変を助長するおそれがあること、A「意に反する改変」と「名誉又は声望を害するおそれのある改変」のそれぞれの範囲と両者の関係については様々な考え方があり得るものであり、仮に文言を改めても必ずしも実際上の問題の解決に資することが期待できないこと、B現行法の下でも、「意に反する改変」か否かは、著作者の単なる主観的判断によるのではなく、社会通念上、名誉・声望などの人格的利益を害するおそれがあるかどうかによって判断するという解釈も可能であること、C実際上は、いわゆるマルチメディア・ソフトの製作に際して、製作者が通常想定される改変についてはあらかじめ著作者から許諾を得るなどの適切な契約慣行を確立し、極端なケースについては権利濫用や信義則の法理を適用することによって対応可能と考えられること、Dそもそもマルチメディアにおける著作物の利用に関し、現実にどのような改変が行われ、著作者人格権に係る問題がどのように生じているのかという具体的な実態が必ずしも明らかでないこと」などを挙げ、「今後この問題への制度的対応を更に検討するとすれば、これらの諸点に十分留意する必要があると考えられる。」としている。
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