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杉並区・住基ネット訴訟 控訴審・第3準備書面から(4/4) 本人確認情報の要保護性について


 しかしながら,同判決は,本人確認情報が,「憲法13条が国民に保障するプライバシー権の内容となり,それによる保護の対象となる」ものにつき,「個人の人格的自律ないし人格的生存に必要不可欠な,個人の私生活上の自由及び平穏に関する利益(憲法の個別規定で保障されている基本権と同等の憲法的価値を有する人格的利益)には直接に関わるもの」と,「これに密接に関連する利益」とを十分な根拠なく区分し,後者についての要保護性を低く評価しているのは不当である。
 つまり,「憲法13条が,国民に対して保障するプライバシー権の中核をなすところの,個人の人格的自律ないし人格的生存に必要不可欠な,個人の私生活上の自由及び平穏に関する利益(憲法の個別規定で保障されている基本権と同等の憲法的価値を有する人格的利益)」「に密接に関連する利益」であるにもかかわらず,要保護性を低く評価する合理的根拠は存在しないというべきである。

(3)さらに,横浜地裁判決(甲75 35〜37頁)も,「住基ネットにおいて本人の同意なく提供される本人確認情報には,@氏名,A生年月日,B性別,C住所,D住民票コード,E変更情報がある。」,「上記@からCの基本4情報は,個別にみれば,個人識別のための単純な情報であって,その限りでは秘匿すべき必要性の高い情報とまではいえない。しかし,基本4情報を一体としてみた場合には,個人識別という側面を超え,個人の私生活に密接に結びつく情報として,秘匿すべき必要性のある情報となり得るというべきである。例えば,ストーカー行為等を行う相手(ストーカー行為等の規制等に関する法律第2条2項参照)に対しては,基本4情報であっても,開示されたくないと考えることは自然なことであり,その期待は保護の対象となるというべきである。また,平成15年5月30日に施行された個人情報保護法は,氏名,生年月日を含む個人識別情報を保護の対象としていること(個人情報保護法2条1項),従来,原則として誰でも住民基本台帳の一部の写しを閲覧できるとしていた住基法は,平成18年6月,一部改正され,閲覧することにできる場合を法律で定める一定の場合に限定し,不正の手段による閲覧,閲覧事項の目的外利用等の禁止に対する違反への制裁措置を強化したこと(平成18年法律第74号。11条,11条の2,46条,47条,49条,51条,54条等。平成18年9月政令297号により,平成18年11月1日より施行。)からも,基本4情報のような個人情報についても保護されるべき情報に当たるとの認識が広まっていることをみてとることができる。」,「住民票コードそれ自体は,11けたの数字の羅列でしかないが,住民一人一人に付された重複することのない固有の番号であり,住基ネットにおいては,基本4情報と共に提供され,本人確認情報の提供を受けた機関等がこれを基に当該機関が有している情報と結合することを予定していることからすると,秘匿する必要性の高い情報というべきである。」,「変更情報についても,住基ネット上,変更内容それ自体が記録されるわけではないが,性別及び氏名に関する変動のみが「職権修正等」として記録され(住基法7条1項1号,同項3号,施行令30条の5第3号,施行規則11条3項2号),これにより,性別の変更,結婚,離婚等の身分上の重要な変動があったことを容易にうかがわせることになるから,秘匿する必要性があるというべきである。」として,「住基ネットにおける本人確認情報は,一体としてみた場合,自己情報コントロール権の保護の対象となるというべきであり,また,住民票コードはそれ自体,秘匿性の高い情報といえるから,これも自己情報コントロール権の保護の対象となるというべきであって,住民は,原則として,自己の同意なしにこれらの情報が収集,利用,提供されることを拒むことができるとするのが相当である。」とし,本人確認情報の要保護性を認めているところである。


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