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杉並区・住基ネット訴訟 上告理由書から( 2/13) 住民の憲法上の権利を地方自治体が主張することについて


3 さらに,第三者所有物没収事件における最高裁昭和37年11月28日大法廷判決<昭和30年(あ)第2961号>(刑集16巻11号1593頁)は,第三者の所有権を理由とする主張について,以下のとおり実質判断を行っているのであり,原判決が本件につき違憲主張適格を制限的に理解しているのは,憲法76条・81条の解釈を誤ったものであるとともに,最高裁判所の判例に反するものである。
「第三者の所有物を没収する場合において,その没収に関して当該所有者に対し,何ら告知,弁解,防禦の機会を与えることなく,その所有権を奪うことは,著しく不合理であつて,憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし,憲法29条1項は,財産権は,これを侵してはならないと規定し,また同31条は,何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪われ,又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが,前記第三者の所有物の没収は,被告人に対する附加刑として言い渡され,その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから,所有物を没収せられる第三者についても,告知,弁解,防禦の機会を与えることが必要であつて,これをなくして第三者の所有物を没収することは,適正な法律手続によらないで,財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。そして,このことは,右第三者に,事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは,別個の問題である。」

4 なお,最高裁平成8年1月30日第一小法廷決定<平成8年(ク)第8号>(民集50巻1号199頁)は,宗教法人解散命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件において,宗教法人が信者の憲法20条に基づく信教の自由を理由とする主張につき,原決定が実体的憲法判断を行わなかったのに対し,「所論は要するに,抗告人を解散する旨の第一審決定(以下「本件解散命令」という。)及びこれに対する即時抗告を棄却した原決定は,抗告人の信者の信仰生活の基盤を喪失させるものであり,実質的に信者の信教の自由を侵害するから,憲法20条に違反するというのである。以下,所論にかんがみ検討を加える。」として実体的憲法判断を行い,「宗教法人に関する法的規制が,信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても,これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば,憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し,憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。」としつつ,「宗教上の行為の自由は,もとより最大限に尊重すべきものであるが,絶対無制限のものではなく,以上の諸点にかんがみれば,本件解散命令及びこれに対する即時抗告を棄却した原決定は,憲法20条1項に違背するものではないというべきであ」るとした。
  原判決が本件につき違憲主張適格を制限的に理解しているのは,憲法76条・81条の解釈を誤ったものであるとともに,このような最高裁判所の判例にも反するものである。


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