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杉並区・住基ネット訴訟 上告理由書から(13/13) 地方自治権

4 地方自治法138条の2は「普通地方公共団体の執行機関は,当該普通地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令,規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を,自らの判断と責任において,誠実に管理し及び執行する義務を負う。」と規定しているが,この規定は,地方自治体が「自らの判断」「において」,法律を「執行する」権限を有することを前提として,「自らの責任」「において」,法律を「執行する」義務を負うことを定めていると解される。なぜなら,権限がないことについては責任を負うべきいわれはないからである。地方自治法138条の2のこの規定は,憲法92条「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は,地方自治の本旨に基いて,法律でこれを定める。」に基づき,地方自治の本旨に基づいて定められたものである。

5 以上に述べたことからすれば,「自治事務」に関し,住民の基本的人権に関わる法律の合憲性についての自主判断権を否定した原判決は憲法92条・94条の解釈を誤ったものである。
  なお,沖縄県知事署名等代行職務執行命令訴訟における最高裁平成8年8月28日大法廷判決<平成8年(行ツ)第90号>(民集50巻7号1952頁)は,「都道府県知事の行うべき事務の根拠法令が仮に憲法に違反するものである場合を想定してみると,都道府県知事が,右法令の合憲性を審査し,これが違憲であることを理由に当該事務の執行を拒否することは,行政組織上は原則として許されないが,他面,都道府県知事に当該事務の執行を命ずる職務執行命令は,法令上の根拠を欠き違法ということができるのである。」と判示しているが,これは,分権改革前の時代における機関委任事務に関するものであって,機関委任事務に関しては国と地方公共団体の首長との関係は上命下服の関係にある行政機関内部の関係に近い側面があったが,分権改革以後においては国と地方公共団体は対等の関係である上に,少なくとも「自治事務」に関しては地方自治体は国の下部機関ではないから,上記大法廷判決の判示は「自治事務」に属する住基ネット関係事務には該当しないものである。


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