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著作権法違反刑事事件 量刑例 H16.11.30 京都地裁(映画の配信)

H16.11.30 京都地裁 判決 <平15(わ)2018号>
著作権法違反被告事件 〔Winny事件〕
 ファイル共有ソフトWinny(ウィニー)を使用してインターネット利用者に映画の情報を自動公衆送信し得るようにした行為が、著作権法違反になるとされた事例

出典 裁判所ウェブサイト、判時 1879号153頁

主文

 被告人を懲役1年に処する。
 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
 訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

 (罪となるべき事実)
 被告人は、法定の除外事由がなく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、平成15年9月24日から同月25日までの間、群馬県【以下省略】所在の被告人方において、A社(代表者B)が著作権を有する映画の著作物である邦題名「X」及びC社(代表者D)が著作権を有する映画の著作物である邦題名「Y」の各情報が記録されているハードディスクと接続したパーソナルコンピュータを用いて、インターネットに接続された状態の下、そのアップフォルダに上記各情報が入った送受信用プログラムの機能を有するファイル共有ソフト「Winny2.0β6.6」を起動させ、同パーソナルコンピュータにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に上記各情報を自動公衆送信し得るようにし、もって上記各著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害したものである。
・・・
 (量刑の理由)
 本件は、ファイル共有ソフトであるWinnyを用いて2本の映画をアップロードし、アクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に各映画の情報を自動公衆送信できるようにし、各映画の著作権者が有する著作権を侵害したという事案である。
 被告人は、Winnyを使用することで、廃盤になっていたDVDソフトを手に入れることができたことから、自己も同じように所持している映画等の情報をアップロードして、他の利用者に提供しようなどと考え、本件犯行に及んだというのであり、その動機は、まことに思慮を欠いた安易かつ身勝手なものである。被告人の供述によれば、約1年の間、本件を含め、常時15本から20本程度の映画の情報を次々とWinnyネットワーク上にアップロードしていたというのであるから、相当多数の者によりそれらの映画の情報がダウンロードされ、無料でその視聴の用に供されていたものと推察される。このような被告人の行為は、巨額の制作費、時間及び労力等を費やして映画を制作した著作権者の努力を無にするものであり、かかる著作権侵害行為が蔓延することとなれば、映画を制作しようとする者の意欲を削ぐこととなり、ひいては映画産業が衰退してしまいかねないのであるから、知的財産権の保護が国内外における社会的課題ともなっている中、本件は、まことに悪質な犯行というべきである。各著作権者らの処罰感情が厳しいのも当然である。
 以上からすれば、被告人の責任は重い。
 しかし、他方で、被告人が、捜査段階から客観的な事実関係については素直に認め、自己の行為を反省するとともに、二度と本件のような行為をしない旨述べていること、20万円を贖罪寄付していること、被告人の前科は業務上過失傷害罪の罰金前科2犯のみであること、本件は、弁護人が、種々の主張をして争ったため、審理に約1年間を要することになったものの、この弁護活動は、被告人の公判供述等に照らすと、果たして被告人の意思に適ったものであったのか疑問なしとしないから、これをもって、被告人自身の反省の程度に疑いの目が向けられるものではないことなどを考慮して、被告人に対しては、主文の刑を科した上で、その執行を猶予することとした。
 (裁判長裁判官 楢崎康英 裁判官 神田大助 裁判官 佐々木隆憲)

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