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U氏事件・控訴審・第1準備書面から(2/5)

 労働者災害補償保険法施行規則「別表第一 障害等級表」だけでなく,自動車損害賠償保障法施行令「別表第一」にも第一級として「一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」,「二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」という同様の定めがある。

  これらの解釈につき,従来の裁判例は原判決のように狭く限定的には理解していない。多数の裁判例があるが,以下では比較的最近のものを3件取り上げる。

(1)東京地裁平成17年3月17日判決(判時1917号76頁)は以下のとおり判示している。

  「(2)原告一郎の後遺障害等級及び介護の程度
ア 前記(1)の評価・検討
(ア)原告一郎は、前記前提となる事実(3)のとおり、自算会により、高次脳機能障害につき後遺障害等級一級三号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの)、一眼(左目)の失明につき同八級一号(一眼が失明したもの)にそれぞれ該当するとして、併合一級の認定を受けている。
 そして、前記(1)の事実を総合すると、原告一郎の現在の症状、日常生活の状況等は、次のとおりであると認められる。すなわち、原告一郎は、通院等を除きほとんど自宅内で過ごしており、高次脳機能障害による認知障害や左眼失明と左片麻痺があるため、外出には付添いを必要とする。入浴に際しては、浴槽に一人で入ることができず、また、転倒の危険があること、身体を十分に洗うことができないことから、原告太郎が一緒に入り全介助している。食事は、用意されれば、箸を使い、自ら口に食べ物を運び、そしゃく、嚥下することができるが、左片麻痺のため、口の左側に食べ物がくるとこぼしてしまい、また、半側空間無視のため、左側にあるものを食べ残すので声掛けが必要である。更衣は、上下とも介助を要する。排泄は、日中は自らトイレに向かうことができるが、後始末ができないため、介助を要する。洗顔、歯磨き、髭剃りについては、指示をすればこれらの動作を行うが、二つ以上の動作をすることができず、上手くできないところは家族がやり直す必要がある。つかまるところがあれば、つかまって立ち上がることができ、また、伝い歩きもできるが、車椅子への移乗には介助を要する。」

  「(ウ)また、都丸医師の平成一五年一〇月三〇日付け回答書(甲五九)、同年一二月四日付け回答書その二(甲六一)、平成一六年三月二三日付け調査嘱託に対する回答(甲六二)、同年一〇月七日付け回答書(甲六六)及び同月二七日付け意見書(甲六七の一)における所見は、おおむね次のとおり、原告一郎は、常時介護を要する状態であるとしている。」
  「a 原告一郎の後遺障害の内容は、高次脳機能障害が重度に残存し、自立した生活は困難である。身体障害として左片麻痺、バランスの低下のため立ち上がり動作、立位保持、実用性のある歩行は不可能であり、また、左眼は失明している。原告花子が説明する原告一郎の症状と自宅での介護ないし看視の状況は、原告一郎に重度の高次脳機能障害、重度の左片麻痺及びバランスの低下があることからすれば、医学的に予測されることであり、全く矛盾はないと考える。
b 現在の状態は(特に注意・記銘力など自立した生活に最も重要と考えられる機能が)健常者の下限を大きく下回っており、身体機能の左片麻痺、バランスの低下もあるため常時介護が必要な状態である。原告一郎の場合、平成一三年八月二五日現在のFIMにおける得点は、食事五点、整容四点、清拭二点、更衣・上半身三点、更衣・下半身一点、トイレ動作二点、排尿管理四点、排便管理七点で、総得点は六二点であり、一項目当たりの平均得点は三・四四点であるから、少なくとも中等度の介護は必要ということになる。FIM項目の中で最も易しいと考えられている食事ですら五点であり、自立していないことを考えると、日常生活動作の遂行能力がかなり温存されているとはいえないと考える。食事項目が五点であるということは、家族(介護者)による促しが食事場面において必要であることを意味している。また、原告一郎には認知障害があるため、常に見守り(監視)が必要と考えられ、見守りも自立ではなく要介護状態なので常時介護が必要な状態と思われる。」

  「(エ)以上を総合すると、原告一郎は、症状固定の診断後も、一定限度で、症状の改善はみられ、外出、入浴、階段移動、車いすへの移乗、更衣については全介助を要し、他方、食事、洗顔、歯磨き、髭剃り等やその余の時間については,常時の監視、指示・声掛け(促し)で足りると認められるが、介護の態様(介助あるいは監視等)を別とすれば、随時介護では足りず、常時介護を要するものと認められる。そうすると、原告一郎の後遺障害は、やはり常時介護を要するものとして、後遺障害等級一級三号に該当するものと認めるのが相当である。」

  この事例では,日常生活で必要な動作につき,訴外Uよりもはるかに自力で行えている。


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