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U氏事件・控訴審・第1準備書面から(4/5)


(3)さらに、東京地裁平成15年8月28日判決(交民集36巻4号1091頁)は以下のとおり判示している。

  「キ 平成一一年一月八日ころ(関東労災病院退院後の時期)
(ア)外来診療録(乙一九、九五・九六頁)
 意識は清明であり、コミュニケーションについても応答がある。小声で聞き取りづらいことがあり、独り言も多い。
(中略)
 食事については、右上肢を使用して可能である。
 排泄は、洋式トイレにおいて要介助である。頻回にトイレへ行く。本人が心配がり、リハビリパンツを着用している。
 基本動作として、寝返り、起き上がり、坐位保持、立ち上りはそれぞれ可能である。歩行は、四点杖及びSHB使用によって可能である。屋内において自立レベルであり、一〇mを五七秒七二(三七歩)にて歩くことができる。
(中略)
(イ)作業療法評価、方針(平成一一年一月一二日から記入開始。乙一九、四三頁)
 更衣(下衣のみ)、入浴動作に介助を要するが、他の動作はほぼ自立している。
(ウ)Barthel Index(乙一九、六五頁)
a 摂食
 一〇点・自立(reach内に食物を置けば摂食することができる。自助具を使ってもよい。適当な時間内に食べ終わる。)
(中略)
h 尿失禁
 一〇点・自立(失禁無し。SCIでは自己導尿することができる。尿集器の着脱、管理ができる。)
i 便失禁
 一〇点・自立(失禁無し。座薬、浣腸の使用可。)
j 移乗
 一五点・自立(安全に車椅子でベッドにアプローチし、移乗する。必要なら車椅子の位置を変え、ベッドから車椅子に移乗。)
k トイレ(移乗)
 六点・自立(安全にトイレにトランスファーできる。手すり、その他安定したものを使用してよい。)
l トイレ(後始末)
 四点・自立(衣服の上げ下げ、服を汚さない。ペーパー使用、bed panを使用してもその管理ができれば可。)
m 歩行
 一五点・自立(五〇m歩行可。義肢、装具、松葉杖、杖、歩行器〔車無し〕の使用可。rolling worker使用不可。)
n 階段昇降
 五点・要介助(要監視又は少しの介助が必要。)
 なお、以上の括弧内の記載は、得点を付けるための評価の基準を示すものであって、必ずしも原告春子の現実の状態を示しているとは限らないものと考えられる。
(中略)
ケ 平成一一年六月二四日ころ(日大板橋病院通院開始約五か月後の時期。平成一一年六月二四日付け国民年金・厚生年金保険診断書〔乙二一、一五・一六頁〕)
 日常動作の障害程度については、右でつまむ、右で握る、右でさじで食事をすることが、一人でもうまくできる。座ること、歩くことは、一人でできるがうまくできない、その他は一人では全くできない。立ち上がるのは可能で指示は必要、階段昇降は可能であるが手すりが必要である。
 日常生活には、ほぼ常時介助が必要な状態である。
(中略)
(2)コムスンによる介護時(平成一二年七月一〇日から同年八月九日まで)の状況《証拠略》によれば、コムスンによる介護状況、当時の原告春子の状況等について、以下の事実が認められる。
   ア コムスンの担当者のうち、一日当たり二人ないし三人が、概ね午前・午後・夜間をそれぞれ担当する(二人の場合には、一人が午前、一人が午後・夜間を担当する。)という形で原告春子の介護を行った。介護の内容としては、起床、衣服着脱、排泄、洗面、歯磨き、食事、服薬、水分補給、外出、入浴、就寝の介助を行った。なお、コムスンの担当者によるこれらの介助の内容は、原告両親によって行われたものとほぼ同様であった。
イ 食事時間は、ばらつきはあるものの一時間前後を要し、三分の二からほぼ全量を摂取していたが、半量摂取にとどまることもあった。コムスン作成の日誌の平成一二年七月一八日の欄には、「TVに背を向けていたこともあり、いつもの倍の量を二〇分程で食べてしまいました。食事はキッチンで取った方がよいのでは、とお母様と話しております。」・・・との各記載がある。」

「(3)現在の状況
 前記(1)及び(2)において認定した事実、《証拠略》を総合すると、原告春子の現在の状況については、以下のとおりであると認められる。
ア 食事について
 原告春子は、身体能力的には、右手を使い、箸ないしスプーンを用いて食物を口に運び、噛み、嚥下することがほぼ可能であり、一回の食事に要する時間は、通常は一時間前後と考えられる。もっとも、原告春子の精神状態、食べる物の好き嫌い、食事に付き添う相手によっては、三〇分も掛からない場合もある一方で、二時間ないし三時間程度掛かることも少なくない。これは、もともと体の各動作に時間が掛かることに加え、食事の初めのころは嚥下までの作業がほぼ滞りなく運ぶのに、原告春子の集中力・注意力が長くは続かないことから、途中からテレビ等の食事以外のことに気を取られ、脳から嚥下の指示が喉に伝わらないことによって、いつまでも嚥下せずに噛み続けることが原因ではないかと推測される(また、空腹であっても食欲が生じることが少ないようである。)。
(中略)」

「(4)(1)ないし(3)の評価
 原告春子の現在の症状は前記(3)のとおりであり、これを要するに、まず、外出・入浴等の一部の行動については、介助が必要であることが明らかである。他方、食事、更衣、排泄等の生活に必要な動作については、左半身の麻痺に加え自発性の欠如が見られることから、個々の動作に相当程度の時間を要し、介護者からの適切な促し(場合によっては、原告春子の行動が余りにも時間を要する場合の一部介助)が必要であり、かつ、それで足りるものと判断される。」
「 ところで、介護の態様には、大きく分けて、介護者にとって余り体力を要しない監視・促しのようなものと、介護者にとって体力を要する介助のようなものの二種類がある。そして、原告春子の場合には、生活のほとんどの場面において介助までは要しないが、常時の監視ないし促しは必要であるから、介護の態様の問題を別とすれば、随時介護では足りないというべきであり、常時介護が必要であると認められる。」

  この事例でも,日常生活に必要な行動は訴外Uよりも多くできている。 



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