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U氏事件・控訴審・第3準備書面から(1/3)

(2006.10)

第1 最も重い障害についての社会通念等について
  自動車事故による後遺障害の基準(本書面において「自賠基準」という。)は,自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年10月18日政令第286号)において,以下のように定められている。

別表第一 (第二条関係) 
等級   介護を要する後遺障害
第一級 一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
    二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表第二 (第二条関係)
等級   後遺障害
第一級 一 両眼が失明したもの
    二 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
    三 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
    四 両上肢の用を全廃したもの
    五 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
    六 両下肢の用を全廃したもの

  労災事故による後遺障害の基準(本書面において「労災基準」という。)は,労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年9月1日労働省令第22号)において,以下のように定められている。

別表第一 障害等級表 (第十四条、第十五条、第十八条の八関係)
障害等級  身体障害
第一級 一 両眼が失明したもの
    二 そしやく及び言語の機能を廃したもの
    三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
    四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
    五 削除
    六 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
    七 両上肢の用を全廃したもの
    八 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
    九 両下肢の用を全廃したもの

  本件主約款所定の高度障害状態(本書面において「本件高度障害条項」という。)は,以下のとおりである。

 @ 両眼の視力を全く永久に失ったとき。
 A 言語又はそしゃくの機能を全く永久に失ったとき。
 B 中枢神経系,精神又は胸腹部臓器に著しい障害を残し,終身常に介護を
  要するとき。
 C 両上肢とも,手関節以上で失ったか又はその用を全く永久に失ったとき。
 D 両下肢とも,足関節以上で失ったか又はその用を全く永久に失ったとき。
 E 1上肢を手関節以上で失い,かつ,1下肢を足関節以上で失ったか又は
  その用を全く永久に失ったとき。
 F 1上肢の用を全く永久に失い,かつ,1下肢を足関節以上で失ったとき。

  以上のとおり,本件高度障害条項は,自賠基準・労災基準の第一級(最も重い障害を定めたもの)と酷似しており,ほかの多くの障害基準と同様に,自賠基準・労災基準の第一級を参考にして作成されたことが明らかである。

 なお,非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令(昭和31年11月8日政令第335号)は,「消防組織法第二十四条第一項の規定による非常勤消防団員に係る損害補償及び消防法第三十六条の三の規定による消防作業に従事した者又は救急業務に協力した者に係る損害補償並びに水防法第六条の二第一項の規定による非常勤の水防団長又は水防団員・・・に係る損害補償及び同法第四十五条の規定による水防に従事した者に係る損害補償」を定めるものであるところ(同令1条),その別表第二・別表第三も同様の定めを置いている。

 そのほか,国家公務員災害補償法(昭和26年6月2日法律第191号)13条2項に基づく人事院規則一六―〇(職員の災害補償)(昭和48年11月1日人事院規則一六―〇)の別表第五,地方公務員災害補償法(昭和42年8月1日法律第121号)29条2項に基づく地方公務員災害補償法施行規則(昭和42年9月1日自治省令第27号)の別表第二などでも,自賠基準・労災基準の第一級と同様の定めが置かれている。

 要するに,すべての公務員,民間企業の労働者,消防作業に従事したり救急業務に協力した市民,事故被害者などにつき,「最も重い障害とは何か」を表したものが自賠基準・労災基準の第一級であり,その内容は,「最も重い障害」についての一般的な社会通念を反映したものなのである。


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