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H17. 4.26 札幌高裁 (配当:純資産:収益 1:1:2)

平成17年 4月26日 札幌高裁 決定 <平16(ラ)88号>
株式価格決定に対する抗告事件
抗告棄却

要旨
株式会社が自らを譲渡制限付非公開株式の先買権者に指定した場合の当該株式の売買価格について、配当方式:純資産方式:収益方式を25:25:50の割合で組み合わせる併用方式により決定するのが相当であるとし一株一〇、三八七円と認定された事例

裁判経過
 第一審 平成16年 4月12日 札幌地裁 決定 平14(ヒ)25号

出典
判タ 1216号272頁 
ウエストロー・ジャパン

評釈全て表示評釈5 件まで表示
稲葉威雄・金商 1270号6頁
大塚和成・金法 1796号4頁
飛田博・国税速報 5962号6頁
酒巻俊雄・商事法研究 46号18頁
酒巻俊雄・商事法研究 45号10頁


事実及び理由

第3 理由

 2 株式の評価方法に関する知見

 非公開株式会社の株式の評価法には,純資産方式,収益方式,配当方式,比準方式,併用方式がある。

  (1) 純資産方式
 純資産方式は,企業のストックとしての純資産に着目して,企業の価値,株価等を評価する方式である。この方式は,企業の静的価値の評価であり,貸借対照表をもとに評価するため,その計算が理解されやすく,@企業が清算手続中である場合又は清算を予定している場合,A企業経営が順調でなく,利益が少ないか又は赤字体質である場合,B過去に蓄財された利益に比し,現在又は将来の見込み利益が少ない場合,C資産の大部分が不動産であり,かつ,清算が容易に行えるような場合に適用される。
 純資産方式には,簿価純資産法と時価純資産法があり,後者は更に再調達時価純資産法,清算処分時価純資産法,国税庁時価純資産法に分けられる。

  (2) 収益方式
 収益方式は,企業のフローとしての収益又は利益に着目して,企業の価値,株価等を評価する方式である。この方式は,企業の動的価値を現し,継続企業を評価する場合,理論的に最も優れた方法である反面,評価が将来収益に全面的に依存しているため,その根拠が不確実となる欠点を持っている。収益方式は,収益を利益として展開する収益還元法と収益を資金上の収入として展開するDCF法(ディスカウンテッドキャッシュフロー法)とに分類される。

  (3) 配当方式
 企業の利益処分のフローとしての配当に着目して,企業の価値,株価等を評価する方式である。この方式は,主として少数株主の株式評価方法として用いられる。配当方式には,配当還元法とゴードンモデル法があり,前者は将来の配当に着目して株価を算定する方式,後者は,企業が獲得した利益のうち配当に回されなかった内部留保額についても,再投資によって将来の利益を生み,配当の増加を期待できるものとして,これを加味した株価の算定をする方式である。

  (4) 比準方式
 評価の対象となった株式会社(評価会社)と業種,規模等が類似する公開会社(類似会社)又は同じ業種の公開会社の平均とを比較して,会社の価値,株価等を評価する方式である。この方式は,評価の対象となった株式会社が上場企業に匹敵する規模である場合や,実際の売買事例が客観性を持つ場合には有力であるが,そうでない場合は説得力に欠ける面を持っている。比準方式には,取引事例法,類似会社比準法,類似業種比準法がある。類似業種比準法(国税庁類似業種比準法)は,課税の公平性と簡便性の観点から政策的に制定された方式である。

  (5) 併用方式
 各種の評価方式を一定のルールで組み合わせて,会社の価値,株価等を評価する方式である。

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