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平成20年11月19日 東京簡裁 判決

平成20年11月19日 東京簡裁 判決 <平20(ハ)5970号>
敷金返還請求事件
(一部認容)

事案の概要
原告が、被告から被告所有のビル7階を事務所として賃借していたところ、原告が中途解約して賃貸借契約を終了し、事務所を明け渡したとして被告に交付していた敷金108万円の返還及びこれに対する明渡日の翌日である平成19年7月4日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求めたのに対し、被告が敷金から控除すべき即時解約金、償却費等があるとして争っている事案

出典
裁判所サイト、ウエストロー・ジャパン

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   (2)  次に,本件では,本件償却特約とは別に本件賃貸借契約書第17条に,「乙(原告)は,契約満了,又は第15条の解約及び第16条の解除による場合,甲(被告)に対し,何等の異議なく直ちに賃貸借物件を乙の費用にて原状に回復して甲に明渡さなければならない。」旨の賃借人の原状回復義務を認める定めがあるところ,一般に,オフィスビルの賃貸借において,次の賃借人に賃貸する必要から,賃借人に通常損耗か否かを問わず原状回復義務を課す旨の特約を付す場合が多いことが認められる。また,この原状回復費用額は,賃借人の建物の使用方法によって異なり,損耗の状況によっては相当高額になることもあり,その費用を賃借人の負担とするのが相当であること,この原状回復特約をせずに原状回復費用を賃料額に反映させると賃料の高騰につながるばかりではなく,賃借人の使用期間は,もっぱら賃借人側の事情によって左右され,賃貸人においてこれを予測することが困難であるため,適正な原状回復費用をあらかじめ賃料に含めるのは現実的には不可能であることから,原状回復費用を賃料に含めないで,賃借人が退去する際に賃借時と同等の状態にまでにする原状回復義務を負わせる特約を定めていることは,経済的にも合理性があると解するのが相当である。そして,原告の主張する判例等は,居住用賃貸借契約の事案であり,そこで示された賃貸借期間中に生じた損耗については,原則として賃借人が原状回復費用を負担することはないことや通常損耗についての修復費を賃料により賃借人から回収しながら,更に敷引特約によりこれを回収することは,賃借時に,敷引特約の存在と敷引金額が明示されていたとしても,賃借人に二重の負担を課すことになるということは,前記のとおり,市場性原理と経済的合理性が支配するオフィスビルのような事業者用賃貸借契約には妥当しないといえる。しかも,原告は事業者であり,被告とは共に事業者という交渉力と情報力で対等な立場にあるから,本件に消費者契約法 を適用することはできない。
 したがって,本件償却特約が本件償却費を本件賃貸借期間中に生じた通常損耗を含む損耗,破損等の修復費に充てる目的とするものであると認められるところ,本件償却特約は,本件賃貸借契約が終了した本件建物に生じた通常損耗を含む損耗,破損等の原状回復費用として敷金の一定の額を充てるものであり,それが原状回復費用の事前の概算的な算定とみることができる限りで賃借人である原告に一方的に不利な特約とはいえず,本件償却費の額も本件敷金の約25パーセントであり,相当な額といえる。したがって,本件償却特約が合理的な約定であると認めることができる。
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