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H20.10.27 東京地裁 判決

平成20年10月27日 東京地裁 判決 <平19(ワ)24034号>
売買代金請求事件
(一部認容)

要旨
被告にチーズを売り渡した原告が、被告に対し、売買代金の支払を求めたところ、被告が、チーズの一部が不良品であったため代替チーズの調達等に多額の費用を要したとして、損害賠償請求権による相殺等を主張して争った事案につき、被告が主張する損害は、チーズが景品用として一定の期限までにスーパーに納品しなければならないものであったという特別の事情によって生じたものであるが、この事情につき、原告において予見可能であったと認めるに足りる証拠はなく、被告の損害賠償請求権は成立しないなどとした上で、請求が一部認容された事例

出典
ウエストロー・ジャパン

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第2 事案の概要
 1 本件は,原告が,被告に対し,卸売りしたチーズ代金の支払を求めているのに対し,被告が,原告から納入されたチーズの一部が不良品であったため,当該チーズの納入先に代替のチーズを納入せざるを得なくなり,それに多額の費用を要したとして,これによる損害賠償請求権との相殺を主張するなどして争っている事案である。
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 3 争点に関する当事者の主張
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(3) 被告の損害賠償請求権の成否等
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 (原告)
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被告は,同月4日に本件チーズの納品を受けたにもかかわらず,原告への連絡を直ちには行わず,かつ,本件チーズをそのまま濡れた箱の中に放置していたものであって,被告が納品後直ちに検品して適切な状態で保管していれば,少なくとも本件チーズ全部が不良状態となることはなかったはずであり,本件チーズの不良の原因に関して被告の保管状況等にも問題がある上,代替チーズ等のカットについては専門業者である被告において十分対応可能な作業であるにもかかわらず,多くのアルバイトを雇うなどして多額の費用を生じさせたことは,被告の損害拡大防止義務に反するものであるから,相応の過失相殺をすべきであり,被告主張の損害額全てを原告に請求することは信義則上許されない。
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第3 当裁判所の判断
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 4 争点(3)について
 本件チーズの不良によってこれを予定どおりにメルシャンに納入することができなかった場合の得べかりし転売利益は,予定されていた品質の本件チーズを納入することができなかった原告の債務不覆行から通常生ずべき損害であるということができるけれども,本件において被告が主張する損害は,本件チーズについて,ボジョレヌーボーの解禁日に合わせてメルシャンが各地のイトーヨーカ堂の店舗で販売するワインの景品用として一定の期限までに納品しなければならないものであったという特別の事情によって生じた損害であるというべきであるから,原告の賠償責任を肯認するためには,原告が上記特別の事情をあらかじめ本件チーズの納入時までに予見し,あるいは予見可能であったことを要する。
 前記1(1)(2)の経緯からすれば,原告においても,被告が本件チーズを我が国におけるボジョレヌーボーの販売時期に合わせて仕入れたものであることを認識していたことが明らかであるけれども,本件チーズの不良により上記時期における販売機会を逸することになるというにとどまらず,それを超えて,これを一定の期限までに納入することができなければ販売先等から損害賠償請求を受ける可能性があるとして,被告において前記1(5)及び2のとおり多大な労力と費用負担をしてまでその納期を遵守する必要があるという事情につき,原告において,本件チーズの納入時までに予見していたことはもちろん,その予見が可能であったことを認めるに足りる的確な証拠はない。
 仮に原告が上記特別の事情につき予見可能であったとしても,原告は,小売価格489万5351円の代替チーズを本件チーズの代金と同額の168万7500円で被告に提供しており,本件の経緯等にかんがみれば,原告において,予定されていた品質の本件チーズを納入することができなかったことに起因する被告の損害を補填する趣旨で,その差額分320万7851円を負担することとしたものと解するのが相当であるところ,前記2の検討に照らせば,被告が原告に対して請求することのできる損害額が上記差額を上回るものであることを肯認することができないから,被告の相殺の主張は結局失当といわなければならない(なお,本件の経緯等にかんがみれば,原告の被告との取引の停止を理由とする被告の損害賠償請求は理由がない。)。
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