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H18. 3. 2 東京地裁判決 否定(後遺障害逸失利益につき)

平成18年 3月 2日 東京地裁 判決 <平15(ワ)20420号>
裁判結果 一部認容、一部棄却 上訴等 確定
要旨
交通事故の被害者の後遺障害逸失利益について、被害者が定期金賠償を請求していても、これを認めるのは相当でないとし、一時金による支払を命じた事例
交通事故被害者の後遺障害による逸失利益について、定期金賠償を求めるのは、その必要性と合理性がない限り、認めるのは相当でない。
(出典 判時 1960号53頁、ウエストロー・ジャパン)
(評釈 榎本康浩・臨床法務研究 6号147頁、佐野誠・損害保険研究 69巻4号171頁)
から

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  (12) 定期金による請求について

 原告一江は、将来の医療費、将来の介護費用、後遺障害逸失利益について、症状固定後一五年間の定期金、その後一時金による支払を求めているが、将来の医療費及び介護費用については、前記のとおり、本件事故による損害とは認められないので、以下、後遺障害逸失利益について判断する。

 民訴法117条1項は、口頭弁論終結時に生じた損害につき、定期金による賠償を命じた確定判決について、口頭弁論終結後に後遺障害の程度、賃金水準その他の損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合には、その判決の変更を求める訴えを提起することができると規定しているが、これは、将来において、口頭弁論終結時に予測し得なかった著しい事情の変更があった場合、損害額に大きな影響を及ぼすことがあることに配慮したものであると解される。

 そこで、検討するに、例えば、将来の介護費用のように、介護費用の額に大幅な変動の可能性があり、その認定が困難であるとか、余命の認定が困難である等の事情から、著しい事情の変化が損害額に大きく影響を与えるような場合において、当事者の衡平を図るため、定期金賠償方式による支払を命じる合理性及び必要性が認められるといえる。そして、将来の介護費用に関しては、被害者が事後的に交通事故とは別の原因で死亡した場合に、その時点で損害が認められなくなること(いわゆる「切断説」)との関係においても、終期を「死亡時」とする定期金賠償方式に整合するものといえる。

 これに対し、後遺障害逸失利益については、前記民訴法117条1項の規定があるので、定期金賠償を認め得る場合があることは否定できないが、一時金賠償の場合に、被害者が事後的に交通事故とは別の原因で死亡した場合でも損害は存続すること(いわゆる「継続説」)、本件の場合、前記(10) において認定した原告一江の後遺障害の内容、程度に照らして、将来の介護費用と一体のものとして定期金賠償を認め得る場合ではないこと、原告一江が定期金による支払を求めているのが症状固定後一五年間のみであり、その後については一時金による支払を求めているが、その合理的理由が明らかでないこと、被告らが定期金による支払を求めていないことを総合考慮すると、本件においては、後遺障害逸失利益について、定期金賠償方式によるべき合理性及び必要性があるものとは認められないから、定期金による支払を認めることは相当とはいえない。
 そして、原告らの合理的意思を解釈すれば、裁判所が定期金による請求を相当でないと判断したときには、一時金による支払を求めているものと解することができるから、一時金による支払を前提として損害額を算定する。
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