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H20. 3.13 東京高裁判決(1/2)

 人身傷害補償保険と損害賠償の関係については、従来、地裁レベルで判断が別れていたが、以下のように、(おそらく初めての)高裁レベルの判断が出た。その影響は大きいと思われる。

平成20年 3月13日 東京高裁 判決 <平19(ネ)5193号>
原判決変更、確定

要旨
交通事故の被害者(被保険者)が保険会社と人身傷害補償保険契約を締結しており、保険金の支払を受けた後、加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起した事案において、被保険者にも過失があるとされたときは、同訴訟において認容された加害者に対する損害賠償請求権の額と支払を受けた保険金の額との合計額が同訴訟において認定された被保険者の損害額を上回る場合に限り、その上回る限度において、保険会社は被保険者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得し、被保険者はその限度で加害者に対する損害賠償請求権を喪失するとした事例

裁判経過
 第一審 平成19年 9月19日 千葉地裁八日市場支部 判決 平18(ワ)14号

出典
判時 2004号143頁 ★コメントが簡にして要を得ていると思われる。
ウエストロージャパン

評釈
潘阿憲・NBL 898号40頁
甘利公人・判評 600号31頁(判評2024号193頁) ★学説状況が整理されており、その後の最高裁判決にも言及している。
潘阿憲・法学会雑誌(首都大学東京・東京都立大学法学会) 49巻2号155頁


(以下、判決の抜粋。適宜改行してある。)

ーーーーー
 カ 小計
 以上の損害額を合計すると、778万0325円となる。
 キ 過失相殺
 第一審原告と第一審被告竹夫の過失割合は5:5であるから、過失相殺後の残額は389万0162円(うち休業損害は155万7748円、逸失利益は97万2414円、傷害慰謝料は81万円、後遺障害慰謝料は55万円)となる。

(4) 人身傷害補償保険の保険金の控除について

 ア 第一審被告らは、「第一審原告は日動火災から人身傷害補償の保険金(休業損害分及び慰謝料分)として290万円の支払を受けたから、日動火災の保険代位により、第一審被告らに対する損害賠償請求権を290万円の限度で喪失した。」旨を主張する。
 《証拠省略》によれば、第一審原告は日動火災と自動車保険契約を結んでおり、本件事故について、人身傷害補償の保険金として合計387万8410円(うち休業損害として210万円、慰謝料として80万円。他は治療費、通院交通費等である。)を受領したことが認められる(以下、上記自動車保険契約の人身傷害補償部分を「本件人身傷害補償保険」という。)。
 そこで、本件人身傷害補償保険の保険金のうち休業損害分及び慰謝料分の合計290万円につき、その保険代位(請求権代位)の有無及び範囲について検討する。

   イ 保険代位の有無について
 上記自動車保険に適用される家庭用総合自動車保険普通保険約款(以下「本件約款」という。)の第二章傷害保険第一節人身傷害補償条項の14条は、「保険金請求権者が他人に損害賠償の請求をすることができる場合については、一般条項第23条(代位)第1項の規定を適用します。この場合には、同項中の「被保険者」を「保険金請求権者」と読み替えるものとします。」と定め、第四章一般条項の23条1項は、「被保険者が他人に損害賠償の請求をすることができる場合には、当会社は、その損害に対して支払った保険金の額の限度内で、かつ、被保険者の権利を害さない範囲内で、被保険者がその者に対して有する権利を取得します。」と定めている(以下、これらの規定を「本件代位規定」という。)。このような約款の規定に照らせば、日動火災は、本件人身傷害補償保険の保険金を支払った場合には、本件代位規定に従って、保険金請求権者の損害賠償請求権を代位して取得するものと解すべきである。
ーーーーー
(続く)

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