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H20.10. 7 最高裁三小(2/2)

前掲
平成20年10月 7日 最高裁第三小法廷 判決 <平20(受)12号>
から

(続き。適宜改行してある。)
ーーーーー
 3  原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,6368万2222円及び遅延損害金の支払を求める限度で,上告人の被上告人Y1に対する請求を認容し,上告人と被上告人Y1との間の判決の確定を条件に上記と同額及び遅延損害金の支払を求める限度で,上告人の被上告人会社に対する請求を認容した。

   (1)  上記2(3)の損害額1億7382万8332円に上告人の過失割合5割による過失相殺をした後の8691万4166円から本件傷害保険金の額である567万5693円を控除すると,残額は8123万8473円となる。そして,同金額に対する本件事故の日である平成14年7月7日から本件自賠責保険金が支払われた平成16年2月23日までの年5分の割合による遅延損害金は664万3749円であるから,本件自賠責保険金3000万円については,まず上記遅延損害金に充当され,残額(2335万6251円)が元本に充当される結果,未てん補の損害額(弁護士費用に係る損害を除く。)は5788万2222円となる。
 上告人は,本件傷害保険金567万5693円のうち被上告人Y1に対する損害賠償請求に当たって控除することができるのは,同金額に被上告人Y1の過失割合を乗じた額に限られる旨主張するが,採用することができない。
   (2)  本件事故と相当因果関係がある弁護士費用に係る損害の額は580万円とするのが相当である。
 4  しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 前記事実関係によれば,本件傷害保険金は,上告人の父が訴外保険会社との間で締結していた本件保険契約の本件傷害補償条項に基づいて上告人に支払われたものであるというのであるから,これをもって被上告人Y1の上告人に対する損害賠償債務の履行と同視することはできない。
また,前記事実関係によれば,本件保険契約においては,本件保険契約に基づく保険金を支払った訴外保険会社は同保険金を受領した者が他人に対して有する損害賠償請求権を取得する旨のいわゆる代位に関する約定があるというのであるから,訴外保険会社は,本件傷害保険金の支払によって,上告人の被上告人Y1に対する損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)の一部を代位取得する可能性があり,訴外保険会社が代位取得する限度で上告人は上記損害賠償請求権を失うことになるのであって,本件傷害保険金の支払によって直ちに本件傷害保険金の金額に相当する本件損害賠償請求権が消滅するということにはならない。
そして,原審が確定した前記事実関係からは,本件傷害補償条項を含めて本件保険契約の具体的内容等が明らかではないので,上記の代位の成否及びその範囲について確定することができず,訴外保険会社が本件傷害保険金の金額に相当する本件損害賠償請求権を当然に代位取得するものと認めることもできない。


 ところが,原審は,本件傷害補償条項を含む本件保険契約の具体的内容等について審理判断することなく,本件損害賠償請求権の額を算定するに当たり,上告人の損害額から上告人の過失割合による減額をし,その残額から本件傷害保険金の金額を控除したものである。しかも,上告人は,原審において,本件傷害保険金のうち被上告人Y1の過失割合に対応した金額に相当する本件損害賠償請求権を訴外保険会社が代位取得する旨の合意が上告人と訴外保険会社との間で成立している旨主張していることが記録上明らかであるが,原審は,この合意の有無及び効力についても何ら審理判断していない。そうすると,原審の判断には,審理不尽の結果,法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ず,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決のうち上告人の敗訴部分は破棄を免れない。そして,上記の点等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫 裁判官 近藤崇晴)
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