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平成 8年 4月25日 最高裁第一小法廷 判決 <平5(オ)527号> 損害賠償請求事件 〔貝採事件〕 破棄差戻 要旨 交通事故の被害者が後遺障害により労働能力の一部を喪失した場合における逸失利益の算定に当たっては、事故後に別の原因により被害者が死亡したとしても、事故の時点で、死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない。 裁判経過 控訴審 平成 4年11月26日 東京高裁 判決 <平4(ネ)1289号・平4(ネ)3165号> 第一審 平成 4年 3月26日 東京地裁 判決 <平元(ワ)13621号> 出典 ★民集 50巻5号1221頁 裁時 1170号1頁 交民 29巻2号302頁 ウエストロー・ジャパン 評釈 ★三村量一・判解15事件・曹時 50巻11号122頁 阿部満・判タ 923号63頁 阿部満・明治学院大学法律科学研究所年報 16号16頁 阿部満・交民 29巻号373頁 加藤了・判タ 921号22頁 樫見由美子・ジュリ臨増 1113号81頁(平8重判解) 樫見由美子・民商 116巻3号112頁 樫見由美子・法教 198号26頁(別冊・判例セレクト’96) 水野謙・ジュリ別冊 176号188頁(民法判例百選U 債権 第5版 新法対応補正版) 阿部満・ジュリ別冊 152号102頁(交通事故判例百選 第4版) 山下純司・法協 115巻8号156頁 遠藤一治・NBL 624号73頁 遠藤一治・NBL別冊 62号109頁 窪田充見・法教増刊(民法の基本判例:第2版) 175頁 手嶋豊・法教 193号156頁 野村好弘 他・賠償科学 25号51頁 潮見佳男・リマークス 15号74頁(1997年下) (判旨から) 交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である。けだし、労働能力の一部喪失による損害は、交通事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから、交通事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではなく、その逸失利益の額は、交通事故当時における被害者の年齢、職業、健康状態等の個別要素と平均稼働年数、平均余命等に関する統計資料から導かれる就労可能期間に基づいて算定すべきものであって、交通事故の後に被害者が死亡したことは、前記の特段の事情のない限り、就労可能期間の認定に当たって考慮すべきものとはいえないからである。また、交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより、賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ、他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるというのでは、衡平の理念に反することになる。 |
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