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平成 8年 5月31日 最高裁第二小法廷 判決 <平5(オ)1958号> 損害賠償請求事件 上告棄却 要旨 1 交通事故の被害者がその後に第二の交通事故により死亡した場合、最初の事故の後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たっては、死亡の事実は就労可能期間の算定上考慮すべきものではない。 2 交通事故の被害者が事故後に死亡した場合、後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たっては、事故と被害者の死亡との間に相当因果関係がある場合に限り、死亡後の生活費を控除することができる。 裁判経過 控訴審 平成 5年 7月19日 東京高裁 判決 <平5(ネ)1076号> 第一審 平成 5年 3月 5日 千葉地裁八日市場支部 判決 <平4(ワ)24号> 出典 ★民集 50巻6号1323頁 裁時 1172号4頁 交民 29巻3号649頁 ウエストロー・ジャパン 評釈 ★三村量一・判解18事件・曹時 50巻11号155頁 樫見由美子・ジュリ臨増 1113号81頁(平8重判解) 阿部満・ジュリ別冊 152号102頁(交通事故判例百選 第4版) 前田達明・民商 120巻3号140頁 遠藤一治・NBL 624号73頁 (判旨から) 交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した場合における財産上の損害の額を算定するに当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の算定上考慮すべきものではないと解するのが相当である(最高裁平成五年(オ)第五二七号同八年四月二五日第一小法廷判決・民集五〇巻五号登載予定参照)。 右のように解すべきことは、被害者の死亡が病気、事故、自殺、天災等のいかなる事由に基づくものか、死亡につき不法行為等に基づく責任を負担すべき第三者が存在するかどうか、交通事故と死亡との間に相当因果関係ないし条件関係が存在するかどうかといった事情によって異なるものではない。 本件のように被害者が第二の交通事故によって死亡した場合、それが第三者の不法行為によるものであっても、右第三者の負担すべき賠償額は最初の交通事故に基づく後遺障害により低下した被害者の労働能力を前提として算定すべきものであるから、前記のように解することによって初めて、被害者ないしその遺族が、前後二つの交通事故により被害者の被った全損害についての賠償を受けることが可能となるのである。 また、交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合、労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては、交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができると解するのが相当である。 けだし、交通事故と死亡との間の相当因果関係が認められない場合には、被害者が死亡により生活費の支出を必要としなくなったことは、損害の原因と同一原因により生じたものということができず、両者は損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との関係にないからである。 |
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