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H 8. 7.29 東京地裁判決

平成 8年 7月29日 東京地裁 判決 <平6(ワ)18509号>
損害賠償請求事件
一部認容、一部棄却

要旨
1 交通事故により後遺障害(第五胸髄節以下完全対麻痺)を残した被害者(症状固定時21歳・男)が、事故から7か月後に自殺した場合における介護料の請求につき、介護料は将来において被害者が出捐を余儀なくされるために認められる損害であるから、被害者が自殺したことで出捐されることがなくなれば損害として請求できない性質のものであるとして、認められなかった事例。
2 交通事故の被害者が傷害のために労働能力の一部を喪失した場合における逸失利益算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、事故時点で死亡原因となる具体的事由が存在し、近い将来死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきでなく、これは、その死亡がいかなる事由に基づくものか、死亡につき責任を負担すべき第三者が存在するかどうか、事故と死亡との間に相当因果関係が存在するかどうかといった事情によって異なるものではない。
3 交通事故により後遺障害(第五胸髄節以下完全対麻痺)を残した被害者(症状固定時21歳・男)が、事故から7か月後に自殺した場合において、被害者は障害の大きさとそれが治らないこと、自己が家族の迷惑になっているとの気持ち等から自殺したと考えられること、後遺障害の程度が重度であり被害者が事故により自殺することも予見できることから、事故と自殺との因果関係が認められた事例。
4 交通事故の被害者が後遺障害のために労働能力の一部を喪失後死亡した場合、労働能力喪失による財産上の損害額の算定に当たっては、事故と死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができるとし、交通事故により後遺障害(第五胸髄節以下完全対麻痺)を残した被害者(症状固定時21歳・男)が、事故から7か月後に自殺した場合において、被害者は障害の大きさとそれが治らないこと、自己が家族の迷惑になっているとの気持ち等から自殺したと考えられ、事故と自殺との間には相当因果関係が認められるとして、逸失利益算定に際し、生活費50パーセントが控除された事例。
5 信号機のないT字型交差点において、片側2車線道路第2車線から右折しようとした加害普通貨物自動車が対向第1車線を直進してきた被害自動二輪車と衝突した事故につき、右折車両のために第2車線の渋滞車両が車間距離をあけていたのであるから、被害車運転者には右折車の存在に注意すべき義務があるにもかかわらずこれを怠ったとして、30パーセントの過失相殺が認められた事例。

出典
交民 29巻4号1095頁
ウエストロー・ジャパン

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