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H13. 9.10 大阪地裁判決(1/2) 定期金・余命 

平成13年 9月10日 大阪地裁 判決 <平10(ワ)6179号>
損害賠償請求事件 一部認容、一部棄却、控訴
事案の概要
 被告が運転する普通乗用自動車が道路を横断歩行中の原告X1に衝突した本件事故につき、遷延性意識障害、射幹・四肢の運動麻痺等の後遺障害を負った原告X1と、その両親、兄及び祖母であるその余の原告らが、被告に対し、自動車損害賠償保障法3条及び民法709条に基づき、内金として損害賠償(含遅延損害金)を請求している事案
要旨
交通事故によって遷延性意識障害、言語障害、射幹・四肢の運動麻痺、痙性麻痺、排尿・排便障害等の後遺障害(1級3号)の残った被害者について、職業的介護人等による介護の必要を認め、1日当たり1万5600円の介護料など、総額1億6913万円余の賠償請求が認められた事例
(出典 判時 1800号68頁、ウエストロー・ジャパン)
から

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 3 争点に関する当事者の主張

  (2) 争点(2) (原告の請求を定期金賠償で認めることができるか。)について

  【被告の主張】
 将来、実際に必要とする介護費を、現在認定するという認定方法には無理があり、年金方式の方が合理的である。民訴法117条1項の趣旨からすると、将来の介護費につき、一時金方式か年金方式かは裁判所の裁量の範囲内の事項である。

  【原告らの主張】
 争う。

  (3) 争点(3) (原告X1の推定余命)について

  【原告らの主張】
 原告X1には、遷延性意識障害があるものの、その意識レベルを示すJCS(ジャパン・コマ・スケール)は、本件事故直後と比較して、改善傾向にあるのであって、意識障害を分類するGCS(Glasgow Coma Scale)においても、自発的開眼があり、発音があり、局所的にではあれ命令に応じ、また、食事を経口摂取している(その量も増えつつある。)のであるから、かなり軽い症状である。また、本件事故直後は、追視・表情などは認められなかったが、次第に追視・表情の変化などが認められてきている。このような原告X1の状況を前提とすれば、原告X1に十分な介護があれば、脱却の可能性もあり、仮に脱却に至ることがなくても、植物状態の患者の死因は、肺炎等であり、これは、十分な介護があれば防ぐことができる。
 シャントチューブ(脳室内の髄液を腹部に流すため脳室と腹部を結ぶチューブ)のバルブが詰まることによる脳幹部周辺の圧迫は、介護者がシャントチューブのつまり具合を点検することにより防止することができるので、十分な介護があれば、シャントチューブによる感染症の危険性はない。吸引性肺炎、尿路感染、てんかん重積に関しては、適切な医療、看護があれば、生命に危険が及ぶことが通常人より格段に高い状態にあるとは考えられない。また、原告X1は、最も肺炎の危険性が高かった急性期においても、肺炎を発症しておらず、症状固定後の肺炎発症は例外的なものにすぎない。
 したがって、原告X1の生存可能年数は、健常人同様、簡易生命表の平均余命によるべきであり、それによれば、原告X1の本件訴え提起日における余命は、67年となる。

  【被告の主張】
 原告X1は、全身麻痺のため自力移動、摂食及び排尿排便等が不可能な、寝たきり状態のいわゆる植物状態である。そして、原告X1は、現在も外傷性水頭症の治療のためにシャントチューブを装着しているため、合併症を併発する可能性も無視できない。また、現に、症状固定後も、喘息性気管支炎、感染性膀胱結石、呼吸器感染症、右外耳道擦過症、感染性皮膚炎、てんかん重積発作、吸引性肺炎等の感染症に罹患している。原告X1には、嚥下障害があり、痰の排出が十分でなく、誤嚥しやすい状態にあるため、肺炎等に罹患する蓋然性が高い。また、糞尿失禁状態であるため、尿路感染症等にも感染しやすいほか、外傷性てんかんにも罹患しており、最悪の場合には死に至ることも考えられる。
 したがって、原告X1の生存可能年数については、平均余命よりも短い合理的期間に限られると解するのが相当である。
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