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H13. 9.10 大阪地裁判決(2/2) 

前掲
平成13年 9月10日 大阪地裁 判決 <平10(ワ)6179号>
から

ーーーーー
 2 争点(2) (原告の請求を定期金賠償で認めることができるか)について

 被告は、原告らが一時金による損害賠償の支払を求めているのに対し、定期金賠償による支払を認めるよう主張するが、損害賠償請求権者が訴訟上一時金による賠償の支払を求める旨の請求をしている場合に、定期金による支払を命ずる判決をすることはできないものと解するのが相当であり(最二小判昭和62年2月6日・裁集民150号79頁)、民事訴訟法117条も、原告による定期金賠償請求に対してなされた定期金による支払を命じた確定判決についての規定であると解されるから、被告の主張は採用することができない。

 3 争点(3) (原告X1の推定余命)について

  (1) 原告X1の症状等
 証拠(<略>)によれば、原告X1の症状等に関して、次の事実が認められる。
<中略>

  (2) 原告X1に対する介護状況
 証拠(<略>)によれば、原告X1に対する介護状況に関し、次の事実を認めることができる。
<中略>

  (3) 原告X1の推定余命年数について

 上記(1) 記載の事実によれば、原告X1には、遷延性意識障害、射幹・四肢の運動麻痺、痙性麻痺、排尿・排便障害があり、自力で移動できず、意志の疎通を欠き、意味のある発語はないが、少なくとも原告X2や原告X3を目で見て認識しているといえ、流動食ではあるものの経口摂食が可能であり、排尿訓練により尿器に排尿することがある程度可能となっているのであり、いわゆる植物症(自力移動、食事自己摂取、糞尿失禁状態、視覚認識、意志疎通、意味のある発語のいずれもができない状態が、いかなる医療の努力によってもほとんど改善することなく、満3ヶ月以上経過したもの(乙11)。)に当てはまるものではない。
そして、原告X1の意識状態は、3・3・9度方式(JCS)の意識障害評価基準においてJCSでII−10以上の刺激なく覚醒する状態にあると認められる。また、原告X1には、嚥下機能が不十分なことから誤嚥、痰のつまりによる肺炎等の呼吸器感染症が生じる危険、排尿・排便障害があることから尿路感染症、褥瘡が生じる危険、射幹・四肢の運動麻痺があることから褥瘡が生じる危険があるといえるが、これらはいずれも適切な介護がなされれば、防止できるか、早期発見による適切な治療が十分期待できるところ、上記(2) エ記載のとおり、原告X2及び原告X3の原告X1に対する介護は、熱心かつ行き届いたものといえるのであって、原告X1に上記危険が近い将来に現実化するおそれは低いということができる。

 したがって、以上のような、原告X1の遷延性意識障害等後遺障害の状態、原告X1に対する介護状態からすると、原告X1の推定余命を認定するに当たり、簡易生命表に基づく平均余命から減じなければならないほどの事情は認められないというべきであるから、原告X1の推定余命年数は、症状固定時(平成8年3月19日、8歳)を基準とすれば、平成8年簡易生命表により、69年と認められる。

 5 争点(5) (原告X1の損害額)について
 当裁判所が認定する原告X1の損害額は、別紙損害額一覧表(認定)「A原告X1」記載のとおりであるが、その詳細は次のとおりである。
<中略>

   オ 平成11年4月1日(原告X3が退職した日の翌日)以後の介護費用
 8750万3668円
<中略>

   (エ) 平成35年2月28日から平成39年8月14日まで
 540万8161円
 原告X3が67歳になる平成39年8月14日までは、原告X3及び職業的介護人が介護を行うと見るのが相当である。
 そして、証拠(甲54、164)によれば、職業的介護人の費用は、パートの場合は1時間当たり1300円程度であり、住み込みの場合は1日当たり1万3000円程度であることが認められる。
 このことからすると、この期間は、原告晶子を主たる介護者とし、職業的介護人が補助的介護に当たるとして、1日当たりの介護費用を原告X3につき1万3000円、職業的介護人につき2600円の合計1万5600円が相当因果関係がある介護料と認めるのが相当である。
 そして、この期間の介護費用の症状固定時における現価を求めるに当たり、この期間を4年間と見て計算すると、540万8161円となる。
 1万5600円
日×365日×(15.5928−14.6430)= 540万8161円

   (オ) 平成39年8月15日から平成77年3月19日まで
 2116万4598円
 原告X1の症状固定日である平成8年3月19日における推定余命は69年であるから、介護費用は平成77年3月19日まで認められるが、この期間の介護は、住み込みにより主たる介護を行う職業的介護人1名とパートにより補助的介護を行う職業的介護人1名が介護を行い、1日あたりの介護費用は、1万5600円となる。
 1万3000円(住込)+1300円×2時間(パート)= 1万5600円
 そして、この期間の介護費用の症状固定時における現価を求めるに当たり、この期間を38年間と見て計算すると2116万4598円となる。
 1万5600円
日×365×(19.3098−15.5928)= 2116万4598円
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