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H19. 9.20 東京地裁判決(1/2) 余命・定期金

平成19年 9月20日 東京地裁 判決 <平17(ワ)24423号>
損害賠償請求事件 認容
事案の概要
 被告Y1が坂道において停止中の自動車を車外前方から自力で押し上げようとし,原告X1(当時21歳)に指示してサイドブレーキを解除させたところ,坂を下り始めた被告車の運転席ドアに原告X1が挟まれて重傷を負った事故につき,原告X1並びにその両親である原告X2及び原告X3が,被告Y1に対しては民法709条又は民法711条,被告宅井装飾に対しては自動車損害賠償保障法3条,被告損保ジャパンに対しては保険契約に基づき,損害の賠償及び保険金の支払を請求した事案
(出典 自動車保険ジャーナル 1718号8頁、ウエストロー・ジャパン)
から

ーーーーー
1 争いのない事実等(当事者間に争いのない事実及び各項掲記の証拠により容易に認められる事実)
<中略>

(2) 原告X1の受傷,入院期間及び後遺障害
ア 原告X1は,本件事故により,外傷性窒息,中心性肝損傷,左肺挫傷,外傷性心肺停止蘇生後脳症等の傷害を受けた(甲4の8)。
<中略>

エ 原告X1の傷害は,わかくさ病院退院時の平成15年7月31日に症状固定とされたが,外傷性心肺停止蘇生後脳症が後遺障害として残り,四肢麻痺の状態になった(甲6)。
<中略>

オ 原告X1は,上記エの後遺障害について損害保険料率算出機構から自動車損害賠償保障法施行令別表第1に定める後遺障害の等級1級1号に該当するとの認定を受けた(甲7)。
<中略>

2 争点
<中略>
(2) 原告らの損害額

(原告らの主張)
<中略>
原告X1の余命については,症状固定後の健康状態等が良好であること等に照らし,平成15年簡易生命表による平均余命の64.81年を基礎とすべきである。
上記の損害について,被告らは定期金による賠償をすることを求めるが,被害者側が一時金による賠償を求めているにもかかわらず,定期金による賠償を命ずることは,請求者側が与えていない期限の利益を裁判所が独自に与えてしまうことになり,処分権主義に違反し許されない。
<中略>

(被告らの主張)
<中略>
原告X1のような高度な遷延性意識障害を伴う重度後遺障害者の推定余命年数は健常人の余命よりはるかに短いことが,統計学的にも相当程度認められることからすると,64.81年という平均余命までの期間を対象としての損害は認められず,生存可能期間を限定して損害を算定すべきである。
仮に,原告X1の生存可能期間について平均余命年数と異なるとの認定ができないのであれば,当事者間の衡平の確保のために,定期金による賠償が命じられるべきである。旧民訴法と異なり,現行民訴法は変更判決の制度(同法117条)を有しているから,定期金による賠償を命ずる判決をした後,後遺障害の程度,賃金水準その他の損害額の基礎となった事情に著しい変更があったときは,変 更判決が可能であること,被告は保険業を営む会社であり,その事業規模からして将来倒産するといった事態は到底予測されず,長期間にわたる定期金の支払がなされることは確実であって,支払能力 について全く問題はないことなどからすると,将来の介護費用の賠償については,現実の生存期間に わたり定期的に支払をする方式によることが合理的である。
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