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H20. 1.24 東京地裁判決(1/4) 高次脳機能障害等 100%喪失

平成20年 1月24日 東京地裁 判決 <平17(ワ)26759号>

症状固定時43歳・男子(運送業務に従事)
高次脳機能障害等
労働能力喪失率100%

 被告運転手を加害者とする交通事故により、被害者(男・症状固定時43歳)である原告が高次脳機能障害を負い、その後遺障害の程度は、自賠責後遺障害等級において併合4級、労災保険において第1級の3に該当すると認定されたところ、原告らが、被害者である原告は自賠責基準で併合2級相当の後遺障害を負った旨主張して、被告らに対して損害賠償を求めた事案において、原告は高次脳機能障害により、自賠責保険又は労災保険のいずれの認定基準によっても労働能力を100パーセント喪失したと認定して、原告らの請求の一部を認容した事例

出典 交民 41巻1号58頁、自動車保険ジャーナル 1734号12頁、ウエストロー・ジャパン

ーーーーー
第3 当裁判所の判断
 1 原告X2の診療経過,症状の推移及び現在の状況
 上記前提事実(第2の1参照)に加えて,証拠(事実の後に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
  (1) 本件事故前の原告X2の状況
  <略>
  (2) 診療経過
  <略>

  (3) 原告X2の現在の生活状況等
   ア 原告X2は,現在,群馬県立精神医療センターのデイケア施設に週4回通所し,運動,昼食作り,工作などを,スタッフ見守りの下で行っている。
 原告X2の日常のサイクルの基本は,午前6時30分ないし7時ころに起床し,食事をして新聞やテレビのニュースを見たり,自ら購入した中古車情報誌等の雑誌を見て過ごし,午後7時ころに夕食をとった後,入浴し,午後10時ころに就寝するというものであるが,日によって相当の振れがある。
 なお,原告X2は,新聞やテレビ番組のニュースを見たりするが,その内容については,直近のものであっても記憶していない。また,原告X2は,家ではメモをほとんど取っていない。
 このような生活状況の中,原告X2は,気の向いた時に犬の散歩をしたり,自転車で近所を散歩したり,自宅の車両を洗車するなどしており,平成19年6月7日に行った本人尋問の際には,将来的には何らかの作業に従事したいという希望を述べていた。
 (甲9,21,25,29,原告X2本人,原告X3本人)
   イ 原告X3の原告X2に対する日常生活における対応の主な例は,次のとおりである。
 原告X2は,起床時間が一定ではないため,原告X3が声を掛けて起床させ,1日の予定を立てることができないため,デイケア施設への通所があるか否か等について知らせる必要がある。また,着替えを自ら進んで行うことができないため,着替えを準備し,着替えるよう声掛けをしなければならない。
 原告X2は,自ら食事をとることはできるが,簡単に調理できるもの以外には自分で食事を準備することはできず,後片付けも自ら行わない。また,コーヒーは自分で入れることができるが,コンロにやかんをかけたまま忘れてしまうことがある。食欲の制約ができず,金銭や服用する薬の管理も自力ではできない。
 原告X2は,1人で入浴することはできるが,入浴させるためには声を掛けなければならず,また,声を掛けないと,身体を洗ったり洗髪をしたりしない。
 (甲9,25,29,原告X2本人,原告X3本人)

  (4) 検査結果
   ア リハビリセンターにおける検査(乙3の3)
 (ア) 長谷川式簡易知能評価スケール(平成14年6月11日実施)
 26
30(なお,同検査においては,21以上は非痴呆とされる。)
 (イ) ウェクスラー成人知能テスト(WAIS−R,平成14年12月10日実施)
 言語性IQ99 動作性IQ83 全IQ91
 (ウ) 三宅式記銘力検査(平成14年12月4日実施)
 有関係対語1−2−3 無関係対語0−0−0
 (エ) 日本版リバーミード行動記憶検査(平成14年12月4日実施)
 標準プロフィール点12
24 スクリーニング点3
12
   イ 帝京大学病院における検査(甲12の1)
 (ア) 長谷川式簡易知能評価スケール(平成17年1月18日実施)
 20
30
 (イ) WMS−R(平成17年2月10日実施)
 一般記憶53 言語性記憶64 視覚性記憶<50
 注意・集中力101 遅延再生<50
 (ウ) Raven色彩マトリシス検査(平成17年2月10日実施)
 32
37

  (5) 原告X2の脳機能障害に関する診断・評価等
   ア 平成13年4月27日付けの原病院における検査結果に基づいての「心理評価と診断」(乙2の2中の71及び72頁)
 記銘力障害が認められる。失見当識がある。即時再生には問題がないが,保持の時間は非常に短く(おそらく1分くらい),それを超えると課題に失敗する。そのため物品再生は正答数が少なく,物語の再生は繰り返しても正答数が上がるといった学習効果が見られない。このことは短期保存された情報を長期記憶に転送できないことを意味する。図形の模写は問題ないが,その再生は全くできない。視覚情報の短期保存は,言語情報と同様に問題がない。物語の遅延再生は全くできず,作話が見られ,全く違った話を作り上げた。

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