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H19. 4.26 大阪高裁判決    高次脳機能障害等 5級、90%喪失

平成19年 4月26日 大阪高裁 判決 <平成18年(ネ)2842号>
(出典 判時 1988号16頁)

(一部控訴棄却・原判決一部変更、確定)

症状固定時13歳・女子(事故当時ー小学校6年生、現在ー大学に進学)
高次脳機能障害(5級)等
労働能力90%喪失

事案の概要
 当時小学校六年生・女子の控訴人X1が横断歩道を歩行して道路を横断していた際、被控訴人Y1が所有して被控訴人Y2人が運転する普通乗用自動車にはねられて、控訴人X1が傷害を受けて損害を被ったことを理由に、控訴人らが自動車損害賠償保障法3条ないし不法行為に基づき損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案
 原審は、控訴人X1の請求を6774万2147円及び内6517万3434円に対する平成11年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容し、その余の請求並びに控訴人X2、控訴人X3及び控訴人X4の請求をいずれも棄却したため、これを不服とする控訴人らが本件控訴を提起し、さらに、控訴人X1が当審で請求を拡張した(成年後見費用と弁護士費用増加分合計755万3700円)。

 横断歩道を歩行中に自動車に追突され、高次脳機能障害の後遺症が残った控訴人(当時小学生、女子、症状固定時13歳)からの、加害車両の運転者及び所有者に対する損害賠償の請求につき、原判決が認容した損害額を不服として、控訴人が控訴した事案において、高次脳機能障害については、控訴人が現在大学に進学し、自宅から公共交通機関を用いて通学していることなどから、5級2号に該当すると認定し、これに加えて、7級に該当する醜状瘢痕を残していることが、実際の就労に影響しうることが認められることから、控訴人の労働能力喪失率を90パーセントとした事例
 控訴人の本来有していた能力等から、基礎収入に関しては、全労働者平均賃金を基準とするのが相当であるとした事例

裁判経過 第一審 平成18年 9月 8日 神戸地裁 判決 平16(ワ)1029号

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  (15) 後遺症逸失利益 6219万0079円

   ア 前記前提事実(原判決第二・二(2))、前記(10)ア及び前記(15)ア並びに《証拠省略》によれば、控訴人一江は、本件事故により脳挫傷等の傷害を負い、平成12年7月27日顔面及び右上腕の醜状瘢痕を残して症状固定し、また、平成13年8月15日高次脳機能障害の後遺症を残して症状固定し、その症状として記憶機能障害、言語機能障害、空間認知機能障害、注意機能障害、管理機能障害、核上性(眼球運動中枢性)眼球運動障害、易疲労性、易怒性、衝動性、脱抑制、固執性、無計画性及び社会性の低下とともにこれらに対する病識の低下などが認められ、日常生活及び社会生活に支障を来しており、醜状瘢痕につき7級12号、高次脳機能障害につき5級2号に該当すると認められる。
 控訴人X1は、一般就労が不可能であるとして併合1級に該当すると主張するが、控訴人X1の普通高校での成績は科目によっては平均よりも上位であり(甲22・資料10)、現在は京都の私立大学に就学し、単独で神戸の自宅から公共交通機関を用いて通学していること等に照らせば、控訴人X1に就労能力がない若しくは就労が困難との医師の意見書(甲16、22、33)があり、就学・通学に当たり相当の困難があると窺われることを考慮してもなお、その労働能力を完全に喪失したとまでは認め難く、単純繰り返し作業などに関しては、一般人に比較して作業能力が制限されており就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないものの、就労も不可能ではないというべきであり、上記主張は採用できない。
 そして、5級に該当する高次脳機能障害を残していることに加えて、7級に該当する醜状瘢痕を残していることが実際の就労に影響しうることが認められることにも照らすと、控訴人X1が喪失した労働能力は90パーセントと認めるのが相当である。

   イ 基礎収入は、症状固定当時に控訴人X1が義務教育過程に就学していたことやその性別等に加えて、同控訴人が5級2号に該当する高次脳機能障害を後遺症として残しながらも、学校での勉学・部活動に励み、高校・大学に進学し、現在も懸命に大学での就学に努力していることから窺われる同控訴人の本来有していた能力、意欲、家族の支援からすれば、本件事故に遭わなければ大学を卒業して就職し得たであろうことが容易に推認されること等に照らせば、控訴人X1の主張にかかる全労働者平均賃金を基準とするのが相当であって、直近の平成16年賃金センサス第1巻第1表・産業計・企業規模計・学歴計の全労働者・全年齢の平均賃金の年収485万4000円を基準とするのが相当であるというべきである。
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