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H19. 1.31 大阪地裁判決(1/2) 定期金賠償(否定)、余命(通常)

平成19年 1月31日 大阪地裁 判決 <平成16年(ワ)第1808号>
(出典 自動車保険ジャーナル第1703号)

(控訴)

18歳(症状固定時23歳)・女子(3日前に大学への推薦を得た高校生)

若干改善したとはいえ遷延性意識障害(1級3号)を残し自宅介護している事案につき、総損害額3億4,791万8,549円を認めた事例

被告が介護料等につき定期金賠償を主張したことにつき、履行確保の措置に配慮し、原告が一時金による賠償を求めている場合に定期金賠償を命ずることが処分権主義の観点から許されるかという問題もあるなどとして認めなかった事例

過失相殺60%

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 3 争点3(症状固定後の介護費及び介護雑費につき、定期金賠償方式によること
の可否)について

 被告らは、介護費が一時金で認定され、認定された余命期間内に被害者が死亡した場合、死亡後の期間に相当する介護費を被害者の遺族が取得することは不合理であるが、加害者がこれを回収しようとしても、不当利得返還請求よるべきか、請求異議の訴えによるべきかが明らかでないこと
から、症状固定後の介護費及び介護雑費につき、定期金賠償方式で認容することが合理的であると主張する。
 確かに、定期金賠償方式によれば、実際に必要となる介護費等を過不足なく被害者に賠償することが可能となり、現実の必要性に対応する形で被害者の生活を保障できる等の利点があるが、定期金賠償方式による場合、将来の支払拒絶、支払不能に備えた履行確保の措置に配慮する必要があり、原告が一時金による賠償を求めている場合に定期金賠償を命ずることが処分権主義の観点から許されるかという問題もある。また、本件において、被告らは、定期金賠償方式による判決を求める旨を明示しているが、原告らは、一時金賠償を求め、定期金賠償は求めない旨を明示している。
 以上の各事情を考慮するならば、原告花子の症状固定後の介護費及び介護雑費について定期金賠償を命ずることはできないというべきである。

 4 争点4(損害の発生及び損害額)について
  (1) 原告花子の余命期間
 被告らは、原告花子が「寝たきり」の状態にあり、「寝たきり者」の平均余命は一般人より短いため、原告花子の余命を認定するにあたっては、平均余命を相当程度に限定して認定すべきである旨主張し、「寝たきり者」の平均余命が健常者に比べ短いとされた平成4年及び平成7年の国民生活基礎調査によるデータを挙げている(証拠略)。

 しかしながら、国民生活基礎調査においては、アンケートの結果に基づき、必要な介護の度合から、要介護者を「全く寝たきり」、「ほとんど寝たきり」、「寝たり起きたり」の3種類に分類し、そのうち「全く寝たきり」、「ほとんど寝たきり」と分類された者を合わせて「寝たきり者」としているのであり、「寝たきり」になった原因については考慮していないのであるから(証拠略)、「寝たきり者」の平均余命が健常者の平均余命を下回るとされたことをもって、原告花子の余命が日本人の平均余命を下回ると推認することはできない。また、原告花子は遷延性意識障害により「寝たきり」となっているものであるが、遷延性意識障害の程度には様々なものがあり、今後の医療の発展により遷延性意識障害患者の生存期間が現在より長期になる可能性もまた否定できないのであるから、原告花子が遷延性意識障害患者であることをもって、同人の余命が平均余命を下回ると認めることはできない。
 したがって、原告花子の余命期間は、平成15年簡易生命表に基づき、症状固定時(23歳)以降62年間であるとするのが相当である。

  (2) 中間利息控除の基準日
 被告らは、原告らが本件事故日からの遅延損害金の支払を求めていることを理由に、後遺障害逸失利益につき、本件事故日から症状固定日までの中間利息をも控除すべきであると主張する。

しかしながら、中間利息控除の基準時と遅延損害金の起算点とは必ずしも論理的に関連しないこと、遅延損害金が単利式で計算されるのに中間利息控除は複利式で計算されること、被害者は、事故日において賠償金を利殖に回すことができないにもかかわらず、その中間利息を控除する扱いにすると被害者に不利益を及ぼすことになることなどからすると、被告らの主張は採用できない。
 したがって、逸失利益の算定においては症状固定日を基準に中間利息を控除するのが相当である。
 また、症状固定後の治療費、交通費、介護費及び介護備品購入費を算定するにあたっても、同様に、症状固定日を基準に中間利息を控除するのが相当である。
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