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■３２ （旧９） （有責方向(21)） 最高裁第二小法廷 平成１２年９月２２日判決 ＜平成９年（オ）４２号＞ ＫＷ：死亡との因果関係、生存の相当程度の可能性 （裁判官：梶谷玄、河合伸一、福田博、北川弘治、亀山継夫） ★民集５４巻７号２５７４頁、判時１７２８号３１頁、判タ１０４４号７５頁、裁時１２７６号１頁 ★調査官解説：杉原則彦・判解３２事件（曹時５４巻４号１９９頁、ジュリ１２１３号１３４頁、ジュリ増刊（最高裁時の判例２）２１６頁） ＜上告棄却＞ ＜(出生日不詳)、H1.7.8、医療法人社団緑成会＞ ＜評釈等＞ 加藤新太郎・判タ臨増 1065号114頁、志村由貴・ジュリ 1344号65頁、溜箭将之・ジュリ 1344号47頁、西田祥平・ジュリ 1344号42頁、杉原則彦・ジュリ 1213号134頁、窪田充見・ジュリ臨増 1202号69頁（平12重判解）、大塚直・ジュリ 1199号9頁、溜箭将之・法協 118巻12号134頁、野村好弘 他・賠償科学 27号14頁、良永和隆・民事研修 590号33頁、平沼髙明・民事法情報 175号59頁、（最高裁判決速報）・民事法情報 171号25頁、鎌田薫・法教 246号23頁（別冊・判例セレクト’00）、澤野和博・名経法学（名古屋経済大学） 10号187頁、林誠司・北大法学論集 55巻3号297頁、渡辺達徳・法セ 555号104頁、手嶋豊・年報医事法学 17号154頁、稲垣喬・民商 123巻6号98頁、新美育文・リマークス 24号59頁（2002年上）、医事法令社・医療判例解説 11号64頁 ＜審級経過＞ 第一審：東京地裁 平成７年４月２８日判決 ＜平成２年（ワ）１３１６８号＞ 控訴審：東京高裁 平成８年９月２６日判決 ＜平成７年（ネ）２３１４号＞ （２００万円を認容） ＜要旨＞ 「医師が過失により医療水準にかなった医療を行わなかったことと患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないが右医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明される場合における医師の不法行為の成否」 （医師が過失により医療水準にかなった医療を行わなかったことと患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、右医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明される場合には、医師は、患者が右可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負う。） ＜コメント＞ ＊ 本判決は、実務上の影響が非常に大きい。 医師に過失はあったが、その過失と患者の死亡との因果関係は認められないという事案については、期待権の侵害などとして一定の慰謝料を認める下級審裁判例があったが、議論の多い問題であった。 本判決は、「生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって」「医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性」「は法によって保護されるべき利益であり、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わないことによって患者の法益が侵害されたものということができる」として、この「生存していた相当程度の可能性」を法益として認めた。 今後は、この論理によって責任を認める判決が増えるものと思われる。 ＊ なお、この「相当程度の可能性」に関してであるが、この判決の事案では、鑑定人が「適切な救急医療が行われたならば、確率は２０パーセント以下ではあるが、救命できた可能性は残る」としている。 |
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