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H18. 6.16 最二小 △(★民集、予防接種、B型肝炎)

■48 (有責方向(36))
最高裁第二小法廷 平成18年6月16日判決 <平成16年(受)第672号、第673号>
KW:予防接種、B型肝炎
 
(裁判官:中川了滋、滝井繁男、津野修、今井功、古田佑紀)
 ★民集60巻5号1997頁、判時1941号28頁、判タ1220号79頁、裁時1414号3頁
 ★調査官解説:▲?
 <一部上告棄却、一部破棄自判>
 
控訴審・札幌高裁で敗訴した2人を含む原告全員の請求を認め、国に1人当たり550万円、計2750万円を支払うよう命じた。原告側の全面勝訴が確定した。
 
<評釈>
蛭川明彦・判タ臨増 1245号105頁(平18主判解)、松久三四彦・ジュリ臨増 1332号85頁(平18重判解)、松久三四彦・判評 585号16頁(判時1978号178頁)、米村滋人・年報医事法学 22号156頁、鹿野菜穂子・リマークス 35号58頁、奥泉尚洋・法セ 626号26頁、田中宏治・法教 316号110頁、青野博之・ひろば 60巻3号58頁、竹野下喜彦・ひろば 59巻11号74頁、升田純・Lexis判例速報 11号50頁
 
 
<審級経過>
第一審:札幌地裁 平成12年3月28日判決 <平成元年(ワ)第1044号>
控訴審:札幌高裁 平成16年1月16日判決 <平成12年(ネ)第196号>
 
<要旨>
 B型肝炎ウイルスに感染した患者が乳幼児期に受けた集団予防接種等とウイルス感染との間の因果関係を肯定するのが相当とされた事例
 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したことによる損害につきB型肝炎を発症した時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例
(乳幼児期に集団予防接種等を受けたX1〜X3がB型肝炎ウイルスに感染した場合において、一、B型肝炎ウイルスは、血液を介して人から人に感染するものであり、その感染力の強さに照らし、集団予防接種等の被接種者の中に感染者が存在した場合、注射器の連続使用によって感染する危険性があること、二、X1〜X3は、最も持続感染者になりやすいとされる0〜3歳時を含む六歳までの幼少期に集団予防接種等を受け、それらの集団予防接種等において注射器の連続使用がされたこと、三、X1〜X3は、その幼少期にB型肝炎ウイルスに感染して持続感染者となり、うちX1及びX2は、成人期に入ってB型肝炎を発症したこと、四、X1〜X3は、出産時にB型肝炎ウイルスの持続感染者である母親の血液が子の体内に入ることによる感染(垂直感染)により感染したものではなく、それ以外の感染(水平感染)により感染したものであること、五、昭和61年から母子間感染阻止事業が開始された結果、同年生まれ以降の世代における新たな持続感染者の発生がほとんどみられなくなったということは、少なくとも、幼少児については、垂直感染を阻止することにより同世代の幼少児の水平感染も防ぐことができたことを意味し、一般に、幼少児については、集団予防接種等における注射器の連続使用によるもの以外は、家庭内感染を含む水平感染の可能性が極めて低かったことを示すものであること、六、X1〜X3について、上記集団予防接種等のほかには感染の原因となる可能性の高い具体的な事実の存在はうかがわれず、他の原因による感染の可能性は、一般的、抽象的なものにすぎないことなど判示の事情の下においては、上記集団予防接種等とX1〜X3のB型肝炎ウイルス感染との間の因果関係を肯定するのが相当である。)
(乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染したX4及びX5がB型肝炎を発症したことによる損害については、一、乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染し、持続感染者となった場合、HBe抗原陽性からHBe抗体陽性への変換(セロコンバージョン)が起きることなく成人期に入ると、肝炎を発症することがあること、二、X4は、昭和26年5月生まれで、同年9月〜昭和33年3月に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染し、昭和59年8月ころ、B型肝炎と診断されたこと、三、X5は、昭和36年7月生まれで、昭和37年1月〜昭和42年10月に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染し、昭和61年10月、B型肝炎と診断されたことなど判示の事情の下においては、上記集団予防接種等(加害行為)の時ではなく、B型肝炎の発症(損害の発生)の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となる。)
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