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肝がん(肝癌)の早期発見のための検査

H21. 1.28 岐阜地裁判決から

肝がんの早期発見のための検査義務に関する一般的知見

ア 肝がんは,併存病変の約8割が肝硬変,約1割が慢性肝炎(その多くは組織学的に進展した慢性肝炎)であり,肝がん患者のうち7割以上がC型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性と,発症要因が比較的限定的であるため,肝がんの早期発見,治療のため,一定の危険群を設定し,これに該当する患者を対象にその危険度に応じて適切な検査を定期的に行うことが有用であり,危険群に該当する患者の診療を行う医師は,当該患者に対して,肝がん早期発見のための適切な検査を行う義務がある。

イ 肝がんの背景因子としては,肝硬変,慢性肝炎,HCV抗体陽性の他,B型肝炎ウイルス(HBs),アルコールの多飲,高年齢(50歳台以上),男性などといった因子も挙げられる。

そのため,一般臨床医に対する教科書である「日本医師会生涯教育シリーズ肝疾患診療マニュアル」(甲B17)では,肝硬変を超高危険群,ウイルス性の慢性肝炎及び非肝硬変のアルコール性肝障害を高危険群,その他の肝障害を危険群と設定し,これらの患者に対して,それぞれ定期的に諸検査を行うよう指針を定めている。同指針は,超高危険群患者に対しては,AFP検査を月に1回,腹部超音波検査を2,3か月に1回,腹部CT検査を6か月に1回,高危険群患者に対しては,AFP検査を2,3か月に1回,腹部超音波検査を4ないし6か月に1回,腹部CT検査を6か月ないし1年に1回並びに危険群に対しては,AFP検査を6か月に1回,腹部超音波検査及び腹部CT検査を1年に1回行うこととしている。

ウ 腹部超音波検査は非侵襲性であり,他の画像診断に比べて安価であるため利用しやすく,直径20o以下の肝がん検出率は90%以上と肝がんの早期発見において他の検査より秀でている。また,肝がんの直径の倍加時間は通常3か月程度と考えられており,直径30o以下の小肝がんを発見するには腹部超音波検査を3,4か月ごとに定期的に行うことが効果的であるとされている。

血液検査によるAFP値の測定は,特異度が低く,基準値を低く設定すると陽性的中率が下がるため,通常,AFP値が200ng/ml以上の場合には肝がんと診断して良いとされる。ただし,直径30o以下の小さな肝がんに対しては,AFP陽性率は4分の1程度と高くない。
一方,AFP値の持続的上昇はがんの存在を強く示唆し,100ng/mlから200ng/ml程度でも,経時的に3ポイント以上,上昇する場合には肝がんの疑いが濃厚となるため,肝がんの早期発見のためには,定期的なAFP値測定が重要となる。
なお,がん細胞のAFP産生能とその個数(腫瘍体積)の積が血清AFP濃度に反映されるため,肝がんのステージ別陽性率は,ステージの進行に伴い上昇する。
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