ホーム > 医療 > 産科・メモ >  

医学的知見 胎児仮死、新生児仮死

<H19. 2.28 横浜地裁判決から>

  (3) 胎児仮死について(甲B4,5,6,乙B6)
 胎児仮死とは,胎児が子宮内において呼吸並びに循環機能が障害された状態をいい,胎児・胎盤系の呼吸・循環不全を主徴とする症候群である。もっとも,臨床上の具体的明確な定義はなく,多くの場合は分娩監視装置が拾い出す胎児心拍数の異常所見をもって診断する。生理学的には酸素・虚血による代謝性あるいは混合性のアシドーシスに陥っている状態と定義される。胎児が低酸素状態になると嫌気性解糖が亢進し乳酸やピルビン酸が蓄積され,また,脂肪代謝が亢進するため,アシドーシスになる。
 胎児が低酸素状態であるかどうかは,血液ガス測定でPO2(酸素分圧)低下,PCO2(炭酸ガス分圧)上昇,塩基欠損(BEの値で示される。)を伴うか否か,すなわち代謝性アシドーシスを発症しているか否かで判断される。
 今日では,胎児にとっての生理的負荷を越えたストレスに対する胎児の反応を胎児ジストレスとし,胎児心拍数図の観察により,胎児ジストレスと判断されたら,その症例に適した医療的処置を講じなくてはならないとされている。

<H19. 3.30 青森地裁弘前支部判決から>

 4 一般的な医学的知見〈弁論の全趣旨,甲B2から4まで,7,乙B2,3〉

  (1) 胎児仮死
 胎児胎盤系における呼吸,循環不全による低酸素血症をいう。妊娠中,分娩中のいずれの時期にも起こり得るもので,成因としては,母体因子(急性貧血,ショック,母体の脱水,過度の運動,過強陣痛,重症合併症(妊娠中毒症,重症糖尿病,甲状腺機能障害など)),胎盤因子(胎盤機能不全,胎盤早期はく離,胎盤の器質的変化),臍帯因子(臍帯巻絡,真結節,過短,下垂,脱出),胎児因子(子宮内胎児発育遅延(IUGR),溶血性疾患,奇形,胎内感染,胎児回旋異常による胎児頸動脈の圧迫)がある。

  (2) 新生児仮死
 分娩時に低酸素状態が何らかの原因で起こり,出生後に,新生児が,低酸素症とそれによる代謝性アシドーシスがもたらした病態のために,第1呼吸(啼泣)の遅延や呼吸障害を示すことをいう。
 なお,アシドーシスとは,動脈血のpH(正常値7.36〜7.44の弱アルカリ性)が低下(中性化あるいは酸性化)する方向に変動する病的過程をいい,そのうち,代謝性アシドーシスとは,代謝性の変化によりHCO3−の減少を来したものをいう。
 そして,出生1分後のアプガースコアが0〜3点の場合は重症仮死,4〜6点の場合は軽症仮死と判断される。
タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック


 


   ホーム > 医療 > 産科・メモ > 医学的知見 胎児仮死、新生児仮死