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医学的知見 吸引分娩

<H20. 3. 5 東京地裁判決から>

  (2) 吸引分娩
 吸引分娩とは,胎児頭部に吸引カップを陰圧をかけることにより吸着させ,カップの柄(牽引ハンドル)を牽引することにより胎児を娩出させる分娩方法である。

 吸引分娩の適応は,@分娩第U期における分娩停止又は分娩遷延,A回旋異常,B軟産道強靱,C母体疲労,D母体腹圧不全,E胎児仮死,F母体合併症(妊娠中毒症,心疾患合併など),G双胎第2児分娩,H帝王切開時の児頭娩出とされ,
その要約は,原則として,@子宮口が全開大していること,A破水していること,BCPD(児頭骨盤内不均衡)がないこと,C先進部が児頭で少なくとも骨盤document image部(station+2以上)まで下降していること,D著しい反屈位でないこと,E母体の膀胱・直腸が空虚なことであるが,例外的に,経産婦で頸管の展退が良好で軟らかい場合や,双胎第2児の娩出に際しては,子宮口が全開大していなくとも吸引分娩が可能なことがあるとされている。
なお,吸引分娩の禁忌について,絶対的禁忌は@明らかなCPD,A顔面位,B骨盤位の後続児頭,比較的禁忌は@高位の児頭(浮動児頭),A底出生体重児とされている。

 また,社団法人日本母性保護産婦人科医会発行の研修ノート(甲B6)では,「吸引分娩は,牽引力が鉗子と比べて弱く,安易に施行すると娩出に失敗して逆に母児を危険にさらす可能性がある。したがって,その適応と要約,さらに限界を熟知することが最も重要である。」とされている。

 吸引の失敗が繰り返されると,胎児へのストレスが助長されて,新生児仮死を招くことが多く,頭血腫,帽状腱膜下血腫,頭蓋内出血などの合併症発生の危険性も高まるため,全牽引時間は15分以内が望ましく,最大30分以上にならないようにするとされ,また,2ないし3回の牽引で児頭が全く下降しない場合や,何回もカップの滑脱を起こす場合,または著しい産瘤形成があり,十分な牽引が行えない場合などは,吸引分娩の限界と考えられ,吸引分娩に固執しないこととされている。(甲B6,7,11)


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