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髄膜腫

以下の判例から
前掲
平成19年 8月31日 神戸地裁 判決 <平15(ワ)436号>

(続き)
  (6) 髄膜腫に対する一回による外科的除去術以外の治療について
   ア 放射線外照射について
 かつて、放射線外照射の効果については議論が多かったが、CTやMRIなどの画像導入後の組織学的良性例においては、亜全摘出後の放射線外照射が再発率を有意に低下させ、一〇年以上の長期で検討した場合、肉眼的全摘出例よりも亜全摘出の上、術後照射する例の方が再発率が低かったとの報告がある(甲B五(平成一四年)・三二七頁)。
 もっとも、放射線外照射については、再発を抑えることができるとする報告は少なく、無効とするものが多いとの指摘がある。
   イ ガンマナイフ治療について
 ガンマナイフ治療は、平成二年に日本でも導入され、被告病院脳神経外科講座関連の新須磨病院においても平成四年に導入され、平成一五年二月現在少なくとも二五〇〇例を超える患者の治療が同病院において行われている。
 平成六年一月から平成一〇年六月までに腫瘍辺縁線量が八ないし一六Gy(平均は一一・二Gy)で行ったガンマナイフ治療七三例(腫瘍の大きさは平均径が八・六から五八・三ミリメートル(平均は二四・七ミリメートル)であり、平均径が四〇ミリメートルを超えた五例については二期的ガンマナイフ治療を行った。)について、腫瘍の縮小が六八パーセントに認められ、経過観察中不変であった二八パーセントとあわせると、腫瘍増大抑制効果が九六パーセントに認められたとする報告がある(甲B一三(平成一二年))。
 また、平成三年五月から四年七か月間にガンマナイフ治療を行った八七例(腫瘍の大きさの平均径の平均は二五・八ミリメートル)について、腫瘍の増大抑制効果が九三・一パーセントに認められたとする報告がある。
 ガンマナイフの治療適応は、平均径が三センチメートル以下のものが考えられ、その中でも手術到達が困難な部位であるとか、手術残存病変などが考えられ、髄膜腫についてみれば、頭蓋底髄膜腫等の手術後残存例、再発例等に特に有効とされる。
 腫瘍径二・八センチメートル以下のものについてみると、ガンマナイフ治療を行った場合の増大抑制効果は九〇パーセント前後であり、手術困難な部位の小腫瘍の治療には有効な手段であると指摘される。
 腫瘍径が二センチメートルであっても、その腫瘍が視神経に接している場合、視神経への照射は一〇Gy以下にしなくてはならないことから、二〇Gy照射することは安全とはいえない。また、髄膜腫は比較的感受性が低いと考えられている。
   ウ 二期的手術について
 髄膜腫の再発例においては、くも膜が欠如し、腫瘍が穿通動脈を巻き込んでいることが多く、穿通動脈は走行予測が困難であり、遭遇したときには障害していることがほとんどであることから、術後に重大な後遺症を起こしやすく、腫瘍の中を通過している可能性を考え、意図的に腫瘍を残す際にも十分な注意が必要とされる。

  (7) 内頸動脈結紮の合併症
 内頸動脈結紮後早期に起こる合併症は二二ないし二八パーセント程度で発生するが、その発症形態は、脳低灌流圧による症状、広汎な脳血栓症、脳塞栓症、頸動脈洞反射などがある。
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