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急性膵炎

以下の判例から
前掲
平成19年 7月26日 東京地裁 判決 <平16(ワ)17033号>


(続き)
   エ 急性膵炎
    (ア) 用語の意義(甲B4,5)
 下記a,cないしfは,「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン[第1版]」(急性膵炎の診療ガイドライン作成委員会(日本腹部救急医学会,日本膵臓学会,厚生労働省特定疾患対策研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班)編,平成15年7月出版)(以下「急性膵炎ガイドライン」という。)における定義である。下記bは,「重症急性膵炎の治療方針」(厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班(以下「厚生省研究班」という。)編,平成8年3月出版)(以下「厚生省平成8年治療方針」という。)における定義である。
 a 急性膵炎
 膵臓の急性炎症で,他の隣接する臓器や遠隔臓器にも影響を及ぼし得るものである。臨床的特徴としては,多くの場合,突然発症し,上腹部痛を伴い,種々の腹部所見(軽度の圧痛から反跳痛まで)を伴い,嘔吐,発熱,頻脈,白血球増加,血中又は尿中の膵酵素の上昇を伴う。
 b 浮腫性膵炎
 膵の間質の浮腫を主体とする病変で,膵実質には出血壊死などの変化を認めない。
 c 壊死性膵炎
 びまん性又は限局性に膵実質が非可逆的壊死に陥ったもので,典型例では膵周囲脂肪組織の壊死を伴う。臨床的には,造影CT上,膵実質に明らかな造影不良域が認められるものである。
 d 感染性膵壊死
 壊死に陥った膵に細菌の感染を合併したものである。非感染性膵壊死と鑑別困難なことが少なくなく,感染性膵壊死と診断するためにはFNA(CTガイド下での穿刺吸引細菌培養)が必要である。
 e 膵仮性嚢胞
 肉芽組織あるいは線維性の壁構造を有し,膵液や壊死組織の融解物の貯留を伴うものである。膵管との交通の有無を問わない。急性膵炎の発症後4週以降に見られることが多い。臨床的特徴としては,急性膵炎の患者では,時に膵仮性嚢胞を触知するが,通常は画像診断で発見される。膵仮性嚢胞は,通常膵酵素を豊富に含有し,多くの場合無菌である。
 f 膵膿瘍
 膵及び膵に隣接した限局性の膿の貯留であるが,内部に膵壊死組織はないか,あってもごくわずかである。膵仮性嚢胞内に明らかな膿の貯留を認める場合には膵膿瘍とする。臨床像は様々であるが,多くの場合感染像を呈する。重症急性膵炎発症後4週以降に生ずることが多い。
    (イ) 「急性膵炎臨床診断基準」(厚生省研究班。以下「急性膵炎診断基準」という。),「厚生労働省急性膵炎の重症度判定基準と重症度スコア」(以下,この重症度スコアを単に「重症度スコア」という。),「急性膵炎のステージ分類」,「急性膵炎のCTグレード分類」(以下,単に「CTグレード分類」という。)は,それぞれ別表@ないしCのとおりである(甲B5)。
    (ウ) 急性膵炎ガイドラインにおける推奨度分類
 急性膵炎ガイドラインにおいては,各文献で得られたエビデンスを踏まえ,現状の日本での医療状況に鑑み,検査や治療等について,下記の分類法を参考に推奨度が決定されている。
 A その推奨の効果に対して強い根拠があり,その臨床上の有用性も明らかである。
 B その推奨の効果に関する根拠が中等度であるか,その効果に関して強い根拠があるが臨床上の有用性がわずかである。
 C その推奨の効果を支持する(あるいは否定する)根拠が不十分であるか,その効果が有害作用・不都合(毒性や薬剤の相互作用,コスト)を上回らない可能性がある。
 D その推奨の有効性を否定するか,害作用を示す中等度の根拠がある。
 E その推奨の有効性を否定するか,害作用を示す強い根拠がある。
   オ 検査値
 本件で用いられた各検査の基準値は,別紙「検査結果一覧表」の「基準値」欄に記載のとおりである。また,各検査における異常値の解釈は以下のとおりである。(甲B6の2・4,13,15,乙A2,4,5)
    (ア) 白血球数(WBC)
 ・10000
μl〜50000
μl(軽度〜中等度増加)
 高頻度で感染症(細菌,ウイルス),重症の代謝異常(腎・肝不全など)などが疑われる。
    (イ) 好中球(Neutro)
 ・60%以上(増加)
 高頻度で,ないし可能性として,感染症(肺炎,敗血症など)などが疑われる。
    (ウ) リンパ球(Lymph)
 ・25%以下(減少)
 高頻度で,ないし可能性として,急性感染症の初期などが疑われる。
    (エ) 白血球像
 ・中毒顆粒
 高頻度で,ないし可能性として,重症感染症,敗血症などが疑われる。
    (オ) CRP
 ・10mg
dl以上(高度上昇)
 高頻度で,重症細菌感染症などが疑われる。
 ・1mg
dl以上(中等度上昇)
 高頻度で,細菌感染症などが疑われる。
    (カ) 血中尿素窒素
 ・21mg
dl〜30mg
dl(軽度上昇)
 高頻度で,ないし可能性として,腎機能障害などが疑われる。
 ・30mg
dl〜60mg
dl(中等度上昇)
 高頻度で,ないし可能性として,腎機能障害などが疑われる。
    (キ) Na(血清ナトリウム)
 ・125mEq
l〜134mEq
l(軽度低下)
 高頻度で,慢性腎不全,浮腫性疾患,Na欠乏などが疑われる。

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