ホーム > 医療 > 医学的知見 >  

前立腺癌(前立腺がん)

以下の判例から
平成19年 6月14日 名古屋地裁 判決 <平18(ワ)1190号>
請求棄却、確定
要旨
患者の遺族が、(1)医師の患者に対する前立腺がんの告知及び治療が不適切であった、(2)仮に患者が適切にがん告知を受けながら治療を拒んだのであれば患者の家族に対して患者のがんを告知すべきであったとして、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償を求めたところ、患者に対するがん告知は適切であったなどとした上で、患者が告知を受けながら適切な治療を拒否した場合に、医師には患者の家族にがんを告知する義務はないとされた事例
出典 裁判所サイト、判タ 1266号271頁 


  (3) 前立腺癌に関する医学的知見
   ア 臨床症状
 早期癌において臨床症状はなく,前立腺癌が尿道や膀胱に浸潤して初めて臨床症状が出現する。
 局所浸潤による症状として,膀胱へ浸潤すると血尿,排尿後不快感,排尿時痛や頻尿がみられる。尿管へ浸潤すると水腎症を来し側腹部痛,浮腫,ときに腎不全となる。精嚢浸潤では血精液症,直腸浸潤では血便,頻便や排便困難がみられる。
 転移による症状として,骨転移では脊椎,骨盤,肋骨が多く,症状は骨痛,腰痛や脊髄の圧迫による神経症状,特に下肢麻痺である。リンパ節転移では尿管閉塞により側腹部痛,下肢麻痺,腎不全が起こる。全身症状として,貧血,悪液質,体重減少,出血がある。
   イ 診断
 前立腺癌の診断は,直腸内指診,PSA測定後,確定診断としての病理診断,更に病理確定診断後の病期決定のための前立腺,リンパ節,遠隔転移巣の検索を行う。
    (ア) 直腸診
 安価,簡便で重要な診断法である。早期癌では硬い結節や硬結を触知する。癌が腫大し,周辺へ浸潤すると辺縁は不明瞭となり左右対称性の消失,表面を凸凹状に触知する。
    (ウ) PSA
 前立腺癌の診断や治療後の経過観察に有用な腫瘍マーカーである。PSAが4.0以下を正常,10.1以上を強く癌を疑う領域とする。
    (エ) 画像診断
 経直腸的超音波断層法(TRUS),CT,MRI,尿道膀胱造影,排泄性腎盂造影,骨レントゲン・骨シンチグラフィー等を実施する。
    (オ) 膀胱鏡
 膀胱への浸潤,特に膀胱頸部や三角部への浸潤を直接みる方法である。
    (カ) 前立腺生検(確定診断)
 PSA,直腸診,TRUSの所見で前立腺癌が疑われたら,生検を行い組織学的に確定診断が行われる。
    (キ) 進行度判定
 病理診断で前立腺癌が確定したら,CT,MRI,骨シンチグラフィーで病期診断を行う。
   ウ 治療
 前立腺癌の治療法には,内分泌療法,放射線療法,手術療法,化学療法があり,進行した前立腺癌に対する治療法としては,内分泌療法が絶対的適応とされている。内分泌療法は,前立腺癌がアンドロゲン(男性ホルモン)依存性癌であるという性質を利用した療法であり,次のようなものがある。
    (ア) 去勢術(両側精巣摘除)
    (イ) エストロゲン療法
 エストロゲンは間脳・下垂体を抑制しFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)の放出を低下させることにより精巣機能を低下させ,また,直接に精巣のテストステロン合成酵素を阻害する。これらの相互作用により,血中テストステロン濃度が去勢レベルにまで低下する。使用される薬剤として,ホンバン及びプロセキソール等がある。
    (ウ) LH−RH療法
 LH−RHの高活性アゴニストを連日投与し続けると,LH及びFSHの分泌抑制が高度に生ずる。その結果,精巣からのテストステロン分泌が抑えられ,血中濃度は1ng
ml以下にまで抑えられる。この薬物的去勢効果によってホルモン感受性前立腺癌に有効性を発揮する。使用される薬剤として,リュープリン及びゾラデックスがある。
    (エ) アンチアンドロゲン療法
 前立腺癌細胞内でのアンチアンドロゲンレセプター阻害作用によって制癌作用を発揮するもので,使用される薬剤として,プロスタール錠25,オダイン及びカソデックス等がある。

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック


 


   ホーム > 医療 > 医学的知見 > 前立腺癌(前立腺がん)