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以下の判例から 前掲 平成18年11月22日 東京地裁 判決 <平16(ワ)203号> (4) 敗血症について ア 敗血症 敗血症は、体内の感染病巣から細菌などの微生物あるいはその代謝産物が血液内に流入することにより引き起こされる重篤な全身症状を呈する臨床症候群である。進行すると敗血症性ショックに至り、播種性血管内凝固症候群(DIC)、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、多臓器機能低下症候群(MODS)などを併発し予後不良となる。 近年は、種々の重篤な生体侵襲に対する全身炎症反応を伴う病態を全身性炎症反応症候群(SIRS)とし、敗血症は感染症が原因でSIRSを呈している状態と定義付けられ、血液中の細菌の証明は診断基準から除かれている(甲B22〔1720〕、甲B24〔1086、1087〕、甲B25、甲B26)。 イ SIRS 以下の2項目以上が該当するときにSIRSと診断される。 〈1〉 体温>38度または<36度 〈2〉 呼吸数>20回 分またはPaCO2<32torr 〈3〉 心拍数>90 分 〈4〉 白血球:12000 μl以上または4000 μl以下あるいは未熟顆粒球(桿状核球)>10% 敗血症の臨床所見としては、全身症状、原発感染病巣による症状、転移性感染病巣による症状、合併症による症状が混在して認められる。全身症状としては、悪寒戦慄を伴う急激な高熱、頻脈、頻呼吸、意識障害、消化器症状などがあり、重篤感が伴う(甲B22〔1721〕、甲B24〔1086、1087〕、甲B25、甲B26)。 ウ 重症敗血症、敗血症性ショック 重症敗血症とは、臓器機能障害、臓器循環低下あるいは血圧低下を伴う敗血症をいう。 敗血症性ショックとは、適切な輸液療法にもかかわらず血圧低下が持続する状態で、敗血症に合併するものをいい、血圧維持のため、血管作動薬を投与している患者を含み、血管作動薬により血圧が維持されている場合でも、臓器機能障害、臓器循環低下があれば敗血症性ショックとされる(甲B22〔1721〕、甲B24〔1086、1087〕、甲B25、甲B26)。 エ 敗血症の予後 敗血症から敗血症性ショックに移行すれば死亡の危険性は増大する。重症敗血症患者の約20〜35%、敗血症性ショック患者の40〜60%は30日以内に死亡し、他はその後6か月以内に死亡するとする文献もある。晩期の死亡は、不十分な感染症の抑制、集中治療の合併症、多臓器不全、患者の基礎疾患などで生じるとされる(甲23〔828、832〕)。 (5) 真菌症について ア 真菌症 真菌症(真菌感染症)は深在性真菌症と表在性真菌症に大別される。わが国で見られる深在性真菌症の原因真菌の大部分は、病原性は弱く、健常人に感染症を起こすことはまれであり、多くは日和見感染として発症する(甲B22〔1806〕)。 血管カテーテルは、深在性真菌感染症の最も大きな原因であるところ、血管カテーテルに関する感染症による死亡率が米国では入院患者の14〜28%と報告されているのに対し、我が国の特に外科領域では、これによって死亡するに至っていないのは、米国では医療費の関係からむやみにカテーテルを交換できないのに対し、わが国では単なる発熱だけでも比較的簡単・早期にカテーテルを抜去するというように、両国の対応が大きく異なっていることにあるとする文献もある(甲B9〔317〕)。 イ β−D−グルカン 免疫血清学検査の項目であり、カンジダ等の深在性真菌感染症で高値を示す。基準値は、20.0pg ml以下であるが(甲B6、乙B15〔239〕)、臨床的には10pg ml以上を陽性とするとの指摘もある(乙B10〔161〕)。 (6) 大腸癌の進行度について 大腸癌の進行度は以下のように分類される(甲B34〔4〕、乙B9)。 ア デュークス分類について デュークスA:癌が大腸壁内にとどまるもの デュークスB:癌が大腸壁を貫くがリンパ節転移のないもの デュークスC:リンパ節転移のあるもの デュークスD:腹膜、肝、肺などへの遠隔転移のあるもの イ ステージ分類について 0期:癌が粘膜にとどまるもの I期:癌が大腸壁にとどまるもの II期:癌が大腸壁を越えているが、隣接臓器に及んでいないもの III期:リンパ節転移のあるもの IV期:腹膜、肝、肺などへの遠隔転移のあるもの |
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