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イレウス(腸閉塞)、うつ病の診断基準など

以下の判例から
平成18年 6月21日 東京地裁 判決 <平17(ワ)24491号>
請求棄却
要旨
腸閉塞の疑いにより独立行政法人である医療センターに搬送された患者の原告が、当該医療センターが適切な治療を怠ったこと、過去に原告が通院しデパスという薬物依存による離脱症状が生じる可能性がある抗不安薬の処方をされていた東京都の経営する病院の医師が診療情報提供書に適切な情報を記載しなかったことから、今回の治療により離脱症状が生じ常に介護を要する精神状態となったとして、当該法人及び都の両者を被告に損害賠償を請求した事案において、都の医師は診療情報提供書に記載すべき義務を履行していたこと、医療センターの医師らにも過失はなく、被告らに不適切な治療はいずれもなかったとして原告の請求をいずれも棄却した事例
出典 ウエストロー・ジャパン

 2 医学的知見等

  (1) 腸閉塞(イレウス)
   ア 定義、症状等
 腸管内容の運行が途絶されることによって引き起こされる病的状態をいい、臨床的には排ガス及び排便の停止とそれに伴う腹痛、嘔吐、腹部膨満などの腹部症状、脱水、電解質異常などに起因する全身症状を呈する。終局的にはエンドトキシン血症、ショック状態を呈して死に至る。(乙B5〔245〕)
   イ 治療
 腸閉塞(イレウス)の治療には、輸液、イレウス管による吸引・減圧、抗生物質の投与、鎮痛剤の投与及び浣腸といった保存的治療を行う。
 保存的治療の開始後4日を目安に保存的治療を継続し、症状の改善が全く認められないか、少しでも悪化する例では手術に踏み切る必要がある。しかし、悪化せず、少しでも改善する例では、高カロリー輸液(IVH)による栄養管理の下、10日前後保存的治療を継続してよい(この点については、保存的治療を開始して1週間前後で改善傾向が見られない場合には積極的に手術を考慮すべきであるとの報告が多い、との指摘がある(乙B6〔1807〕)。)。この間、時期を見てイレウス管からの造影を行い、高度の狭窄又は閉塞が確認されれば手術する。(乙B5〔255〕)

  (2) 便秘(乙B1〔350、351〕、B2〔100〕、B3〔768、771〕)
 便秘とは、便通の回数、便量、便の硬度、排便の満足感などを考慮して、排便の回数からは3ないし4日以上排便がないもの、排便があっても排便量が少なかったり硬便になって苦痛やさまざまな愁訴、不安、頭痛、腹部膨満感、残便感、不快感などを伴うものをいう。
 便秘には器質性便秘(癌や腸閉塞、巨大結腸などの病原性の便秘)、機能性便秘等に分類されるところ、その治療には生活指導、食事内容の指導、水分の摂取、精神面の安定を図ることが重要であるとされる。下剤を用いる場合は、作用の弱いものから使用する必要があり、かつ、必要最小限にとどめるべきであるとされる。
  (3) 離脱症状(乙B3〔1652、1655〕、B4〔806〕、弁論の全趣旨)
 離脱症状は、規則的に使用され、依存を形成した薬物等の摂取の中止もしくは急激な減量に引き続いて起こる精神・身体症状をいう。デパスは抗不安薬の一種であるところ、抗不安薬は、依存症を生じ得る。
 離脱症状は、退薬症状又は禁断症状ともいい、手指、腕、下肢などのふるえや、発汗、不眠が起こるほか、重症になると筋肉の痙攣、全身の痙攣発作や幻覚、異常行動等が見られるようになる。
 上記の症状が現れた際には、ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン系の抗不安薬やフェノバルビタールなどの抗てんかん薬を服用させる。

  (4) うつ病の診断基準
   ア 国際疾病分類第10版(ICD−10)によれば、うつ病の診断基準としてあげられるうつ病エピソードには次がある(丙B1〔129、130〕)。
   (ア) 典型的症状
 抑うつ気分
 興味と喜びの喪失
 活力の減退による易疲労感の増大や活動性の減少
   (イ) その他の一般的症状
 集中力と注意力の減退
 自己評価と自信の低下
 罪責感と無価値感
 将来に対する希望のない悲観的な見方
 自傷あるいは自殺の観念や行為
 睡眠障害
 食欲不振
   イ 軽症のうつ病と診断されるには、上記「典型的症状」のうち少なくとも2つ及び「その他の症状」のうち少なくとも2つのエピソードが見られる必要がある。
 中等症のうつ病と診断されるには、上記「典型的症状」のうち少なくとも2つ及び「その他の症状」のうち少なくとも3つ(4つが望ましい)のエピソードが見られる必要がある。
 重症のうつ病と診断されるには、上記「典型的症状」の3つすべて及び「その他の一般的症状」のうち少なくとも4つ(そのうちのいくつかが重症でなければならない)のエピソードが見られる必要がある(丙B1〔131ないし133〕)。

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