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以下の判例から 前掲 平成18年 1月23日 東京地裁 判決 <平14(ワ)11994号> (続き) エ 腫大虫垂像による鑑別 カタル性虫垂炎と、蜂窩織炎性ないし壊疽性虫垂炎については、一般に超音波検査所見(腫大虫垂像、虫垂結石、膿瘍・腹水・麻痺性イレウス像など)により手術適応を判断するとされており、腫大虫垂像のみの所見の場合、虫垂径が8mm以上であれば手術適応があるとするものが多い(甲B6ないし9)。これに対し、虫垂径と虫垂炎の重症度は比例するとしつつ、虫垂径については、およそ4〜10mmの間で正常例と虫垂炎症例間に重複が存在するから注意を要するとする見解(甲B10)や、虫垂径10mmでもカタル性虫垂炎が最大3割程度含まれるとする見解(乙B10)もある。 超音波所見及び臨床所見によるスコア判定法により手術適応を判断する手法も提唱されており、回顧的検討によれば、蜂窩織炎性虫垂炎以上を手術適応と判定する場合のこの手法の正診率は95.2%であったとされている(甲B5)。その具体的内容は、次の〈1〉ないし〈6〉の点数を合計し、0点以上であれば手術適応があるというものである。 所見 点数 〈1〉発熱(度) 〜36.9 −5 37.0〜37.9 13 38.0〜 10 〈2〉腹膜刺激症状(筋性防御を除く) なし −31 あり 12 〈3〉筋性防御 なし −6 あり 28 〈4〉白血球数 〜9900 −27 1万 〜1万4900 15 1万5000〜 36 〈5〉腫大虫垂像最大径(mm) 描出されず −33 6〜9 −7 10〜14 58 15〜 99 〈6〉腹腔内液体貯留 なし −21 少量 69 多量(膿瘍) 165 (2) 虫垂穿孔と腹膜炎 壊疽性虫垂炎において、虫垂壁の穿孔により腹腔内に内容物が漏出し腹膜への刺激、感染が惹起された場合を穿孔性腹膜炎という。虫垂が穿孔すると、その周囲に大網や腸管が癒着し、膿が腹腔内に広がるのを防いで膿のたまった空間(膿瘍腔)を作る。膿瘍腔は超音波検査により検出される(乙B10)。 穿孔性腹膜炎では、腹膜刺激症状(筋性防御、ブルンベルグ徴候)があれば原則として開腹手術の適応となる。ただし、炎症が局所に限定している場合には抗生物質で様子をみる場合もある(甲B1、乙B10)。 |
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