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脳梗塞、脳血栓、脳塞栓

以下の判例から
前掲
平成17年12月15日 福岡高裁 判決 <平15(ネ)1005号>


  (2) 脳幹部脳梗塞に関する一般的な知見
 証拠(甲18,19)によれば,以下の事実が認められる。

 ア 脳梗塞とは,脳血管の血流障害により,脳組織が壊死を起こすことをいい,血流障害の原因として,脳血栓又は脳塞栓によることが多い。

 イ 脳血栓とは,脳血管に生じた血栓により脳血流障害が起こり,脳梗塞を生じることをいい,血栓形成の原因として,アテローム硬化を伴う血栓が多いが,動脈炎や血液疾患によるものもある。その前駆症状として,脳虚血発作を繰り返すことが多く,発症はゆるやかであり,かつ,段階的に進行する。脳局所症状に比べて意識障害が軽く,髄液は清澄であり,髄液圧は正常であるなどの臨床的特徴がある。ただし,大梗塞を生じた場合は,意識障害,頭蓋内圧亢進を呈しうる。

 ウ 脳塞栓とは,流血中の血栓,空気,脂肪,腫瘍などの異物により脳血管が閉塞し,脳虚血を起こすことをいい,心臓又は太い血管に生じた血栓が剥離し,頚部又は頭蓋内動脈を閉塞することによる場合が多く,脳梗塞全体の約20パーセントから30パーセントを占めている。その症状は突然起こり,意識障害以外の神経症状は発症時に完成する。心弁膜疾患や心房細動など基礎疾患を持つことが多く,多臓器や四肢の塞栓現象の合併,既往がある。運動麻痺や感覚障害以外に,失語,失行,失認などの大脳皮質症状を呈することが多い。CT上の病巣は皮質を含み,出血性梗塞を来しやすい(約40パーセントから50パーセント)。閉塞動脈とその部位によって異なった症状を呈する。すなわち,頸動脈系では,片麻痺,半身感覚障害の外,共同偏視,同名半盲,大脳皮質症状(優位半球では失語,劣位半球では失行,失認など)を伴うことが多い。椎骨脳底動脈系では,四肢麻痺,脳神経症状,同名半盲,皮質盲,めまい,嘔吐を来たし,ときに突然の昏睡に陥る。脳底動脈末端部では,両側又は片側の動眼神経麻痺,垂直注視障害など多彩な眼症状を伴い,中脳障害の症候を呈する。意識は,発症初期には比較的よく保たれているが,経過とともに次第にレベルが低下する。心雑音(拡張期ランブル,すなわち僧帽弁狭窄症が最も多い。),不整脈(心房細動,洞機能不全症候群)が存在する。CT所見では,発症6,7時間以内は余り所見はない。

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