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H22. 3. 1 大阪地裁 ●(出産中に意識喪失、受入れ拒否、脳内出血、死亡、奈良県大淀町立大淀病院)

H22. 3. 1 大阪地裁判決

 奈良県大淀町立大淀病院で2006年8月、出産中に意識を失った高崎実香さん(当時32歳)が19病院から受け入れを拒否された末に脳内出血で死亡したことをめぐり、夫の晋輔さん(27歳)(奈良県三郷町)ら遺族が大淀町と当時の担当医師(62歳)に対し慰謝料など約8800万円の賠償を求めた訴訟。
 実香さんは入院中の06年8月8日午前0時すぎ、頭痛を訴え、意識を失った。担当医は、午前1時37分ごろにけいれんが起きると、妊婦がけいれんを起こす子癇と診断した。午前1時50分ごろ、奈良県立医大病院に受け入れを依頼したが、満床とのことで受け入れられず、同病院などを介して病院を探した。搬送先が決まったのは午前4時半ごろで、午前6時前に国立循環器病センター(大阪府吹田市)へ搬送された。
 実香さんは同センターでCT検査を受け、脳内出血が判明し、帝王切開で長男を出産したが、8日後に死亡した。

 大阪地裁(大島真一裁判長)は、脳外科医の鑑定などをもとに、脳内出血は午前0時ごろに発生し、午前2時すぎには救命困難だったとした上で、午前0時すぎは血圧などに問題なく、経過観察をしたのは不適切と言えず、1時半すぎにけいれんが起きた時点で脳の異常を疑うことができたとしたが、これまでの担当医の経験から1時間程度で搬送先が決まると判断して高次医療機関への搬送を優先させ、その妨げとなり得るCT検査をしなかったことは不適切と言えないとし、病院側が最善の策をとったとしても、救命できた可能性は極めて低かったとして、請求を棄却した。

 なお、同地裁は、判決理由を述べた後に、付言として、妊婦らの救急搬送先が決まらず、30分以上待機した例が2008年に全国で約1千件あったなどとする消防庁発表の調査を挙げ、救急医療とは名ばかりと批判し、救急医療の整備・確保は国や地方自治体の最も基本的な責務であり、医療体制の現状は勤務医の立場からも患者の立場からも許されず、実香さんの死を無駄にしないためにも、産科などの救急医療体制が充実し、一人でも多くの人の命が助けられることを切に望むなどと述べた。

(朝日、読売など)
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