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矛盾する弁論 (リンカーン) アメリカ合衆(州)国第16代大統領リンカーンは優れた法廷弁護士であった。 あるとき、彼は、同じ日に同じ裁判官の前で2つの事件を担当した。 その2つの事件は、同じ法原理に関するもので、1つは、被告側、もう1つは原告側であった。 午前中の事件で、彼は、雄弁な主張をして、被告勝訴の判決を勝ち取った。 そして、午後には、原告代理人として登場し、同様の熱心さで弁論をした。 裁判官はリンカーンの豹変に興味を持ち、リンカーンを裁判官席の方に呼んで、態度の変化の理由を尋ねた。 リンカーンは答えた。 リンカーンは、何と答えたと思いますか? ★ここで止まって,考えてみてください。 リンカーンの答 「裁判官、確かに同じ事件です。午前中の事件では、私も、(判決をした)あなたも、間違っていたと思うんです。私は、今は、この事件で述べたことが正しいと思っています。」 (コメント) 出典(内容は一部異なる。原文のままではない。) 服部健一『くたばれ! アメリカ弁護士』65頁以下 Alex Ayres ed."The Wit and Wisdom of Abraham Lincoln"114頁以下 実話のようである。 「過って改むるにはばかることなかれ」や「君子豹変」の例として理解するか、「三百代言」の例として理解するか。 弁護士にとっては、対立する立場の同種事件を引き受けるべきなのか、引き受けることが許されるのかという問題がある。 例えば、労働事件での使用者と労働者、公害事件での企業と被害者、医療事件での医療機関と患者などについて、問題となりうる。 訴訟が、単に特定の事件についての「紛争解決機能」だけでなく、同種事件を通じての「政策形成機能」を果たすとすれば、一定の方向への政策形成(労働者の権利の発展、公害被害者の救済、患者の権利の確立など)にコミットする者は、少なくとも倫理的には、反対方向への政策形成にコミットすることは許されないのではないかという問題である。 立場の互換性がある場合はあまり問題とならないであろうが、事件の種類をどこで区別するかという問題もあろう。例えば、借地人・借家人と地主・家主との紛争、交通事故での保険会社と被害者との紛争の場合は、かつては一定の傾向性が強かったかも知れないが、今では薄まっているとも考えられよう。 |
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