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勝訴の見込み (逆手) ある男が、法律事務所を訪ね、弁護士に事件の内容を話した。 相談者は、一生懸命に詳しく説明した後で、弁護士に尋ねた。 相談者 「どうすればよいですか。」 弁護士 「訴訟を起こすべきですよ。」 相談者 「訴訟を起こしたら勝ちますか。」 弁護士 「100%勝ちますよ。」 相談者 「本当ですか」 弁護士 「本当ですよ」 相談者は、落胆したような様子で、「じゃあ、訴訟をあきらめます。」と答えた。 弁護士は、驚き、「何で、こんな勝てる訴訟をあきらるのですか。」と聞いた。 この相談者は、何と答えたと思いますか? ★ここで、考えてみてください。 「わかりませんか。相手方の立場で説明したんですよ。」 (コメント) 出典(原文のままではない。) 服部健一『くたばれ! アメリカ弁護士』52頁以下 法律相談では、相談者は、自分に不利な事実を正確に認識していないことがある。場合によっては、自分に不利な事実を隠そうとする人もいる。 また、相手方の言い分や手持ち証拠を知らないで、訴訟になった場合の結果を予測することは困難である。 したがって、弁護士は、「100%勝てる」などとは言わないのが普通である。「お聞きした事実から判断する限りは」とか、「絶対勝つとは言えないが、訴訟を起こす価値はある。」とか言う限度だろう。 また、逆に、相談者に不利な点だけを重視するのも正当ではない。 相談者に不利な面だけを重視していれば、依頼されることがなくなり、弁護士の業務が成り立たないという面もあるが、依頼者の利益を擁護するための努力を通じて道が開けるということもある。 「弁護士は裁判官になってはいけない」と言われる。つまり、今認識している事実だけで最終的判定を下してはいけないと言われているのも、そういう意味合いがある。 だからと言って、相談者の主張に安易に迎合することは、結局相談者に不利な結果をもたらすことになる。 弁護士の仕事の難しい点であろう。 このジョークの場合は、相談者は弁護士の迎合を避けようとしたということになろうか。 『くたばれ! アメリカ弁護士』では「賢い客」というタイトルである。 もっとずる賢い例として、このようなことを聞いたことがある。 弁護士が少ない地方で、ほとんどの事件はA弁護士とB弁護士が扱っていた。 ある人は、最終的にはA弁護士に依頼するつもりだが、まず、B弁護士に相談に行く。その後で、A弁護士に依頼する。 こうすると、相手方がB弁護士に依頼しようとしても、B弁護士は、既に自分の相談にのっているから、弁護士法により相手方の依頼を受けられない。 そうすると、相手方は、身近の弁護士に依頼できなくなり、自分で訴訟をするか、遠方の弁護士に依頼するしかなくなる。 弁護士過疎地域ではこのようなことがありうるだろう。だから、弁護士過疎を解消しないといけないという話にもなるが、弁護士過疎地域だけで問題が起こるのではなく、例えば、ある分野についてすぐれた弁護士ないし事務所が2つの場合でも、似たような問題が起こりうるだろう。 |
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