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観光法 裁判例 H18.11.29 東京地裁

平成18年11月29日 東京地裁判決 <平成16年(ワ)第11928号>
損害賠償請求事件、請求棄却

(要旨)
被告(旅行会社)の主催するアフリカツアーに参加してマラリアに罹患して死亡した事案につき、原告(参加者の相続人)が、被告に対し、ツアーにおけるマラリアの危険性を告知する義務及びツアー後の注意喚起義務を怠ったと主張して損害賠償の支払を求めたが、被告においてマラリア罹患の具体的危険性に関する予見可能性がなかったから、マラリアの危険性について積極的に情報を提供する義務違反や注意喚起義務違反があったとは認められないとされた事例

コメント 
   (2008.2.17)

 旅行業者は、「その主催する旅行に関して、社会通念上、旅行一般に際して生じ得る可能性がある各種の危険とは異なる程度の高度の発生可能性を有する格別の現実的危険が存在する場合」には、「当該危険に関する情報を旅行者に対して告知すべき信義則上の義務があるものというべきである。」というのが、この判決の判断枠組みであるが、「高度の発生可能性を有する格別の現実的危険」という要件が厳し過ぎるだろう。
 「旅行業者は、旅行についての専門業者であり、旅行一般についてはもとより、当該主催旅行の目的地の自然的、社会的諸条件に関する専門的知識・経験に基づいて主催旅行を企画、実施するものであり、旅行者は、その主催旅行の安全性を信頼し、主催旅行契約を締結するものであるといえること」という情報の非対称性を踏まえると、情報提供義務ないし告知義務の要件はもっと緩やかであるべきだろう。
 そして、例えば、本件ツアーにつき、「ツアーで訪れる地域では、マラリアの心配はありません。」というのは、言いすぎと思われる。感染者数や死亡率などを表示するかどうかはともかくとしても、少なくとも、感染の可能性は大きくはないとしても存在するという情報などを提供すべきであったと思われる。
 もっとも、情報が適切に提供されたとしても感染を完全に防止できるわけではないことや早期の適切な治療が必要なことなどからすれば、情報提供義務違反と死亡等との因果関係は容易には認められないことがあろうが、情報提供義務の範囲を限定しすぎるのは、消費者に対する適切な情報提供を促進しないことになり、妥当とは思えない。
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